F1エンジニアとしての始まり
2016年12月14日。僕はシルバーストーンにあるフォースインディアF1チームの門をくぐりました。過去ブログで紹介した通り、そこに至るまでは長く難しい道程でしたが、ずっと目指してきたF1エンジニアとしてようやくスタート地点に辿り着くことが出来ました。
正直、意気揚々とF1チームでのキャリアをスタートした訳では決してなく、自信ゼロでのスタートでした。また、39歳という年齢で掴んだ遅咲きのチャンスでしたし、同年代はすでに僕よりも上の役職ですでにマネジメントサイドで活躍しているだけに、今後のキャリアを考えると決してのんびりとはしていられません。
Sergio Perez@Monaco(引用元:SAHARA Force India F1 Team Official website) |
Vehicle Science Engineerとその仕事
この役職名はF1業界ではちょっと珍しい役職名かも知れませんね。Vehicle Dynamics Engineerとすることが一般的なのですが、そこをあえてDynamicsという言葉ではなくScienceとする点はフォースインディアF1チームらしさを感じた部分でもありました。というのも、かつては400名ちょっとの小規模F1チームだったので、トップチームと違い仕事の守備範囲が広かったのです。そういった背景もあったためなのか、車両運動だけの仕事に従事するのではなく『細かいこと言わずに幅広くF1をサイエンスとして楽しもうぜ!』といった感じの心意気があったのかも?…知れません(笑)。
そしてこのVehicle Science Engineerが、僕が契約したポジションでした。担当業務はリアサスペンションのシステムモデリング、そしてそのモデルを使ったリアサスペンションの減衰特性の数値化とラップタイムシミュレーションモデル用の減衰特性データの導入です。そして、この業務に加えて金曜日のFP1とFP2のファクトリーでのレースサポートを担当しました。ちなみにその役職名はチーム名変更の影響を受けてVehicle Performance Engineerとなり、最終的にVehicle Dynamics Engineerに落ち着くなど、シルバーストーンのチームらしい変遷を辿っていくことになります。
メインの業務となるシステムモデリングについては、前職のSiemens Industry Softwareでダンパーや油圧パワーステアリングシステムでのモデリング経験があったので、すぐにモデル開発の仕事に取り組むことが出来ましたが、レースサポート業務についてはいわゆる未経験、しかも英語のリスニングには特に苦手意識があったので(それは今もですが…汗)、担当し始めた頃は本当に緊張しました。
まとめ
このようにキャリア的には圧倒的ビハインドの状況から新たなスタートを切りました(正直なところ、そのビハインドは今でも背負い続けています)。しかし、これもまた自分の人生の選択ですよね。泣き言は言っていられません!自信を得るには、まずは経験を得ること、そして結果を出すしかありませんよね。
次回のブログでは、今回紹介した仕事をもう少し詳しく紹介します。秘匿義務の関係上、全てを紹介することはできませんが、一般論に落とし込んだ上で出来る限り分かりやすく解説しようと思います。次回のブログ更新をどうぞお楽しみに。
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