2019年1月30日

僕とF1とRCカーと【いざレースの世界へ!】

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説明書通りに、説明書以上に、


いざRCカーのレースに参加すると言っても、すぐに結果が出るほど簡単な話ではありません。まずはマシンをしっかりと準備することが肝要です。F1の世界でも、マシンがファクトリーを出るまでにどれほど仕事をカンペキにやってこれたか?これがとても大切です。それはRCカーの世界でも同じ。TB03を買い、RCカーを始めたばかりの頃の僕はカンペキな仕事をすべく、説明書通りに丁寧に組み上げていました。そう、文字通り説明書通りに。

この時の僕はまだ気づいていなかったのですが、説明書通りでは速さの追求という点では不十分なのです。マシンの真のポテンシャルを引き出すには、説明書以上に組み上げることがとても重要になります。説明書はあくまでも『パーツを組み上げてマシンを形にする』ためのガイドライン。その指示に従えば、誰でも簡単にRCカーを組み上げることができるのですが、そこにちょっとした秘密があります。

TB04 PROIIの説明書
実は工業製品でもあるRCカーの部品寸法には必ずばらつき(公差)があるのですが、公差をちゃんと考慮して設計しておかないと部品同士が干渉してしまい、キレイに組み上がらなくなってしまうのです。特にRCカーの部品の多くを構成するプラスチック部品は、金属に比べると許容公差はどうしても大きくなってしまいます。

このような公差による部品間干渉を避けるため、RCカーに限らず全ての工業製品は公差が吸収されるよう設計されています。RCカーを説明書通りにそのまま組み立てると、出来上がり時にガタつきがあるのはこのためです。このようなガタつきがあるとマシン本来の速さが引き出されなくなってしまうため、しっかりと補正する必要があるのです。

RCカーのアップライト部分は公差管理が特に重要
説明書通りにマシンを組み上げるのは基本。説明書以上に細心の気配りと工夫でマシンを組み上げることは、勝利を目指す上での基本。そんなことをRCカーから学びました。

ひたすら練習あるのみ!


マシンの準備を終えた僕はすぐに練習に励む日々を送ります。当時、日産自動車に勤務していた僕は厚木市に住んでいましたが、自宅のすぐ近くには厚木レジャーランド(通称レジャラン)がありました。幸運にも身近にRCカーを走らせられる環境に恵まれた僕は、週末だけでなく平日の仕事終わりにも練習に励むことになります。

しかし、始めたばかりの頃は運転スキル云々の前に、そもそもマシンが真っ直ぐ走ってくれませんでした(汗)。トリム調整だけでなくフロントのアライメントをきっちりと出せるようになることも大切です。走っては調整、調整しては走っての繰り返しでした。おまけに腕が未熟だったために、しょっちゅうフロントアップライトの部品を壊していました。

ホームコースだった厚木レジャーランド
しかし、人間は地道に頑張りさえすれば成長できるようです。半年あたりが経過した頃には、ぶつからずにそれなりのペースで走れるようになり、走らせることがどんどん楽しくなってきました。そして、僕の悪いクセがひょっこり顔をだしてくるのです。

『ん?もうレースに出てもイケるんじゃね?』

そんなことを確信(勘違いした?)僕は、ニッサンTKFのリーダーでもある吉川氏の『もう大丈夫ですよ!出ちゃいましょうよ~(ニヤリ)』という言葉を受け入れ、意を決してタミヤグランプリのビギナーズクラスにエントリーしたのです。エントリーした時の僕は、恐れ多くも『Aメイン入り(トップ10)は最低でも達成できるでしょー』と安易に考えていたのですが…果たして…。


いざレースへ!が、しかし…


人生で初めてエントリーしたRCカーのレースは2009年3月22日に開催されたタミヤグランプリin東京のビギナーズクラス。ビギナーズクラスとは言え、Aメインに入ってくる参加者はそれなりに速さがありますし、どこまで自分が通用するのか?それを確かめる良い機会でした。

レース当日は早朝に神奈川を出発し、眠い目をこすりながら浅草ROXの会場を目指します。現地でニッサンTKFのチームメンバーと合流し、大会会場が開場されると同時にすぐにピットエリアを設営します。設営後は落ち着く暇もなく車検の準備。この時が最も忙しい時間帯なのですが、この時間帯を落ち着いて乗り切ることがとても大切です。僕の経験では、この時間帯に余裕がない時はレースの結果が良かった例がありません(汗)。

初出場のタミグラでのピットの様子
そしていよいよ各クラス2分間の予選レースが始まります。高鳴る鼓動、汗ばむ手のひら。カートでのレース経験があるとは言え、めちゃくちゃ緊張したことを今でも鮮明に覚えています。そしてあっという間に2回の予選レースが終わりました。

結果は61台中38位でDメイン1位スタート…。Aメインなど遥かに及ばないポジション…。せめてDメインでトップフィニッシュを飾りたいところですが、迎えた決勝レースではミスを連発して2位フィニッシュ。最終的に総合39位という惨憺たる結果に終わってしまったのです。

追い求めるべきもの。


ビギナーズクラスですら、望みうる結果が得られなかったことで本当に落ち込みましたし、心底くやしかったです。たかが趣味かも知れませんが、自分が好きなことで敗北を喫することは、僕にとっては耐え難い屈辱でしかありません(今は仕事でそれを強烈に味わっていますが…汗)。

しかし、どうすれば結果が出るようになるのか?当時の僕にはドライビングスキルだけでなく様々な要素が欠けていたのです。でも、やるからには勝ちたい。そう決意を固めた僕は、欠けている要素を追い求め、練習に勤しむ日々へと再び突入していくことになるのです。

本来は車両運動力学を実践する場として選んだRCカーの世界。気が付けばどっぷりとその世界の虜になっていました(笑)。

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2019年1月21日

僕とF1とRCカーと【再会から復帰へ】

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意外な場所での再会


幼少時代以来、RCカーから離れた生活をずっと続けていましたが、あることがきっかけでRCカーと再会することになります。日産自動車に転職し、2年目を迎えた2008年のことでした。当時は喫煙者だった僕が喫煙所まで足を運んだ時のことです。喫煙所近くの窓際のテーブルになぜかRCカーが飾られていたのです。

『ん?こんなところにRCカーが置いてあるぞ?!』

不思議に思いつつも、そのRCカーに僕の目が奪われたのは言うまでもありません(笑)。久しぶりに見るRCカー。驚いたのは昔のRCカーと比べると圧倒的に精巧な作りになっていたことです。実際のレーシングカーとほぼ同じ形式のサスペンション、ベルト駆動による4WDシステム、実車さながらの本格的な進化に一発で惚れてしまいました。

現在のマシンはタミヤのTB04
興奮しつつRCカーを観察しているとRCカーの傍らにメモが置いてあることに気付きました。そこには『一緒にRCカーでレースやりませんか?』と書いてありました。それを読んだ瞬間に僕の心は決まっていました。

『よし、RCカーのレースに出るぞ!』 と。

この時、職場にRCカーを展示してメンバーを募集していたのは、現在はモータージャーナリストとしてのキャリアを目指している 吉川賢一氏。実際のRCカーを職場に飾ってしまうという吉川氏の大胆不敵な作戦(策略?!)に見事に乗せられてしまった僕は、吉川氏のデスクをすぐに訪問し『RCカーのレース、一緒にやらせてください!』と伝えるのです。

『何か暑苦しい人が来ちゃったぞ…』と吉川氏が思ったかどうかは定かではありませんが(汗)、吉川氏がリーダーを勤める社内RCサークル『ニッサンTKF』に加入させてもらうことになりました。ちなみに吉川氏とはチーム内エースの座を争う仲となるのですが、最終的には僕がチーム内のエースの座を奪う?!ことになります。(え?)

RCカー復帰を決めた理由


当時の僕が所属していたのは日産自動車の走行制御開発部・統合制御開発チーム。そのチームでの仕事は、技術バックグラウンドとして"車両運動力学"に精通していることが求められます。神奈川工科大学の名誉教授・阿部正人先生の著書『車両運動と制御』や、上司が自動車技術会で発表した論文で勉強はしていたのですが、その理論を実践的に学ぶ機会が少なく、『何か良い機会がないものか…』と、その頃の僕は悩んでいたのです。

タミヤTB04のフロントサスペンション
大学時代から続けていたレーシングカートは車両運動力学を学ぶのに良い教材ではあるものの、サスペンション機構を持たないこと、運動メカニズムがちょっと特殊であること、そして経済的・時間的な制約のため、当時の僕にとってはベストな教材とは言えませんでした。

そんな時に再会したのが精巧さを増したRCカーだったのです。現代のRCカー(特にツーリングカーのカテゴリ)は実車さながらのセットアップ変更が可能で、シャシー系だけでも次のようなセットアップ項目があります。

  • スプリング剛性
  • ダンパー減衰力
  • アンチロールバー剛性
  • トレッド幅
  • ホイールベース
  • 前後車高
  • キャスター角
  • アッカーマンジオメトリ
  • キャンバー角
  • キャンバーゲイン
  • タイヤのコンパウンドと剛性

この他、パワートレイン系などを数え上げると枚挙に暇がありませんが、RCカーの良い点はセットアップ変更の手間が実車に比べて圧倒的に小さく済むことです。RCカーを速くするためにどうすれば良いのか?自分なりに仮説を立て、セットアップを変更し、仮説検証のために走行する。こんな繰り返しが気軽にできるわけです。

このように、RCカーが車両運動力学を実践できる最高の教材であったこと。これがRCカーへの回帰を決めた最大の理由です。


復帰時の愛車選び


職場に吉川氏が展示していたのは彼の愛車タミヤTA05(ベルト駆動4WD)で、優れたハンドリング性能で評判のシャシーです。しかし、ベルト駆動4WDがどうも好きになれなかった僕は、異なる駆動方式のシャシーであるTB03(シャフト駆動4WD)を選びました。ライバルとなるであろう吉川氏と同じクルマでは面白くないと思ったのも理由の一つですが、実車に近い駆動方式に美しさを感じたのもTB03を選ぶ動機となりました。

(引用元:タミヤ公式サイト)
RCカーのシャシーには駆動方式の違いに加え、バッテリーやモーターなどの搭載位置にも違いがあります。このため、車両特性もシャシー毎に大きく違ってきます。『どう違うのか気になるなぁ~』と気になって仕方がなかった僕は、最終的にTB03だけでなくTA05、2輪駆動のFF03やM06にも手を出すことになるのですが(汗)、RCカーを始めるに当たっては好みの駆動方式から選んでみると楽しいかも知れません。

また、ツーリングカーのカテゴリの他にも、F1やバギーなどのカテゴリもあります。意外かも知れませんが、僕はRCカーでF1シャシーを走らせたことがなく未知の領域です。現在、幸運なことにホンモノのF1を仕事で走らせているので、今のところは手を出すつもりはありませんが(汗)、いずれはRCカーでもF1の世界に足を踏み入れてみたいと思っています。

憧れのRCカーのレース活動へ!


何はともあれ、TB03でツーリングカーのカテゴリを選んだ僕は、いよいよRCカーレースの世界へ初めて足を踏み入れることになります。しかし…ずっと憧れていたRCカーの世界では、想像していた以上のカベにぶち当たり、悔しい思いをすることになろうとは当時の僕には知る由もありませんでした…。

次回のブログでは、どんなカベにぶち当たったのか?その壁をどのように乗り越えようとしたのかを紹介したいと思います。次回更新もどうぞお楽しみに!

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