2018年8月25日

F1的な就職活動のススメ【はじめに】

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はじめに。


2018年2月より始めた連載ブログ『僕がF1エンジニアになるまで』では、僕がどのようにしてF1へとたどり着いたのか?その軌跡を紹介してきました。F1ファンの皆さんにとってF1の世界を身近に感じるキッカケとして、これからF1を目指す若い人にとっては今後のキャリア形成の参考になれば…とその一心で書き綴っていました。

VJM11(引用元:フォースインディアF1公式サイト)
おかげさまで本当に多くの方々に読んで頂けましたが、F1を真剣に目指す若手の皆さんからすると少し物足りないところがあったようです。2018年夏のport Fさん主催のトークイベントで募った質問の中には『F1の世界で働くには具体的にどうすれば良いのか?』という質問が数多く寄せられており、とても関心が高いことを知りました。

そこで、その関心に(可能な限り…)応えるべく、学生時代の就職活動とF1への転職活動で得た経験を元に『就職活動』をテーマとして複数回に渡ってブログを書いてみたいと思います。そして『どうしたらF1の世界で働けるようになるのか?』その疑問に答えたいと思います。

いちばん大切にしているモノ


そもそもF1エンジニアである前に社会人として、僕が何を考えながら働いているのか?そのことを最初に書きたいと思います。幸いなことに僕は心身ともに健康で何の不安もなく働くことができます。そして、いつもこう思っています。

『仕事を通じて社会に貢献したい』

この考えは社会人としてのスタートを切った三菱自動車に勤める頃に持つようになりました。不祥事の発覚で揺れる中、『なぜ僕はここで働いているのか?』そんなことを自問自答する日々が続いていたからです。

(引用元:レスポンス)
その時に気付いたのです。『自分が健康である限り、どんな仕事、働き方であれ社会に貢献すること。そしてその対価として給料をもらうこと』が働くということなのだなと。自動車メーカーでエンジニアとして働くのであれば、信頼性が高くて安心して乗れるクルマ作ること。これが社会貢献に繋がると思います。気付いてしまえば当たり前のことですが、恥ずかしながら大学生として就職活動をしている時に、僕の頭にこの考えが強く認識されることはほとんどありませんでした。

今でこそ僕はF1エンジニアとして働いていますが、この考えはずっと変わりません。仕事を通じてドライバーに少しでも速いF1マシンを提供すること、レースを通じて世界中のF1ファンにレースを楽しんでもらうこと。これが今の僕がなすべき社会貢献と考えています。


まず考えてもらいたいこと


仕事を通じて目指すものが何であれ、就職活動に取り組むにあたって考えてもらいたいことがあります。それは『どのようにして社会を幸せにしたいのか?』ということです。多くの場合(かくいう自分もそうだったのですが…汗)、就職活動を迎える頃になると自分は何をしたいのか?という自分を中心に置いた考えだけで行動する傾向が見られます。

そうではなく、まずは自分の生きる世界を今まで以上に見渡してみてはどうでしょうか?そして、いろいろな人に会って話をしてみてください。今となってはインターネットには様々な情報がありますし、TwitterやFacebookなどで人の存在を知ることができ、話しかけることも可能な時代です。しかし、そんな時代であっても百聞は一見に如かずだと思います。このブログもまさにインターネット上の情報ですが、僕の知っていることのほとんどはブログに書くことができません(汗)。Twitterも同じです。だからこそ実際に人と会って話をすることはとても重要だと思います。

最終的に自分の生きたい世界への理解が深まってくれば『この仕事を通じて社会に貢献すれば、自分も幸せになれるのではないだろうか…』と感じられるようになるのではないでしょうか。

以上が今回のテーマでブログを書くに当たっての僕の想いです。次回のブログでは『どうしたらF1の世界で働けるようになるのか?』この疑問に対する僕の直球回答を書きたいと思います。もちろん、F1への具体的な就職活動についても今後書いていこうと思いますので、どうぞお楽しみに!

[つづきはコチラ]

2018年8月19日

2018年前半を振り返って

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激動の2018年シーズンも半分が終わり、いよいよ来週からはベルギーGPが始まりますね。すでに夏休みも終わる頃になってしまいましたが(汗)、改めて今年の前半を振り返ってみたいと思います。

皆さんもご存知の通り、今年は想定していた以上にたくさんのことが起きました。そんな激動の半年を振り返り、真っ先に出てくる言葉は…

『さすがに疲れた…』

この一言に尽きます(汗)。夏休みに入るまで有給休暇をほとんど取らなかったので体力的な面での疲労もありましたが、精神的な面での疲労感を特に強く感じました。今年に限っては…特にですね。F1という世界にいる以上、波瀾万丈な仕事人生は受け入れざるを得ないようです(汗)。

そんな波瀾万丈な中でもバルセロナテストから徐々に速くなっていくマシンのパフォーマンスには本当に励まされてきましたし、アゼルバイジャンGPでの表彰台獲得やドイツGPでの安定した力強さを目の当たりにすることができました。そのマシンパフォーマンスに少なからず貢献できたことは本当に嬉しかったです。

(引用元:Force India公式サイト)
さて、今回のブログでは成長を実感できたことと今後の課題、そしてあのイベントについて少し書いてみようと思います。



成長できたところ


自分の仕事はバルセロナテストの一か月前から一気に忙しくなります。新しいマシンが出来上がってくると同時にやることが増えるためです。F1エンジニア生活2年目ともなれば開発の流れも理解できているので、常に先手を打ちながら仕事を進めていきました。不測の事態はたいてい起こるものですから(笑)。

そんな中、昨年の成果と経験をフル活用して準備を進めることが出来たので、何とか順調なスタートを切れたかなと思います。昨年は対応できていなかったことが今年はちゃんと対応できるようになっていたこと。この点は自分の成長として実感できたことが良かったです。

さらに、仕事の担当範囲も今年は大きく拡げることができたので、昨年以上に仕事が充実していました。もちろん、成果として周囲が納得するレベルに仕上げる必要があるので、日々プレッシャーを感じてはいましたが、新しいことに挑戦することはいつも楽しいものです。

『あ、これも検証しておくべきか??』

『うーん、ここの比較もしておくべきだな…』

『本当にこれがベスト??』

こういった自問自答をしながら、最適解を突き詰めていくのはエンジニアとして充実感を得られる最高の瞬間でした。しかも開発の対象がF1マシンなのですから充実しないわけがありません。まだまだ仕事の範囲は拡がりを見せることになるのですが、これからの仕事がとにかく楽しみです。



今後の課題


一方で課題も浮き彫りになりました。上にも書いたように先手を打ちながら進めたは良いものの、全ての先手が必要であったかというとそうでもありませんでした。念押しをし過ぎる部分があったことから、スピード感に欠けることがあったこと。これが一つの課題かなと思いました。

量産車開発と異なり驚異的なスピードで進むF1の開発。その流れにタイムリーに対応する必要があるのですが、そんな中である程度の割り切りも必要です。もちろん、適切にその割り切りを判断する必要があるのですが、その勘所をもっと身に着けられるよう仕事の取り組み方をもう少し考える必要がありそうです。

そして、メンタル面での課題もありました。それはレース結果に一喜一憂し過ぎないことでしょうか。モータースポーツに関わる仕事をする以上、レース結果について少なからず感情を持つのは仕方のないことですが、結果が良くなかった時にちょっと落ち込みすぎたかなと思います(汗)。もう少し気楽でいられるメンタリティの方が疲れない気もするので『動かざること山の如し』となりたいものです。

今後も続くであろうF1エンジニア生活、もう少し慣れが必要なようですね(笑)。





新しい取り組みについて


ご存知の通り、夏休み中の8月4日、5日にport Fさん主催でトークイベントを開催させて頂きました。2日間でのべ180名を超えるF1ファンの方々にお越し頂けました。改めて来場頂いた皆さんに御礼申し上げます。本当にありがとうございました!



F1に限らず多くのモータースポーツファンの皆さんにもっとモータースポーツを楽しんでもらいたい、その一心で休日の時間をフルに活用してイベントの準備に取り組んできました。幸いなことに大きなトラブルもなく無事に終えることができ、さらに事後アンケートでは本当にポジティブな回答を頂くことができました。

これからも時間の許す限り、このようなイベントを通じてモータースポーツを盛り上げていこうと思いますので、今後もご支援よろしくお願いします。実は次回のイベントについて夏休み中にミヤケさんと打ち合わせを済ませています。色々とパワーアップした企画アイデアはあるのですが、port Fさんと一緒に少しずつこのイベントを育てていければと思っています。次回イベントの詳細については決まり次第、port Fさんより公表されることになると思いますので、発表をどうぞお楽しみに!





明日から(ありがたいことに…)仕事が再開します。チーム事情が少し変わりましたが、僕自身がやるべきことに変わりはありません。表彰台のテッペン目指してこれからも頑張っていこうと思います。今シーズンに関してはもう一回くらい表彰台を実現したいところですので、後半戦も引き続き応援よろしくお願いします!

[おわり]