2020年4月1日

ミニ四駆の運動と制御-第7章-

[前回のブログ]
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ディフューザについて考察する。


前回のブログでは翼型ウイングについて、ムーンクラフトの神瀬エンジニアと一緒に考察しました。今回のテーマは『ディフューザ(Diffuser)』です。F1やモータースポーツを良く知る人にとってはお馴染みの空力デバイスです。

ゴッドバーニングサン
(引用元:タミヤ公式サイト)
ディフューザについて良く知らない…という人もいると思うので、まずはその仕組みを簡単に紹介します。その次に、神瀬エンジニアとの考察を紹介したいと思いますが、その考察の中で『超低レイノルズ流れ』というキーワードが登場します。

果たして、このキーワードがミニ四駆の空力とどのように関係してくるのでしょうか?

ディフューザ(Diffuser)とは?


車体底面の空気流れを利用してダウンフォースを得る空力デバイスがディフューザです。F1マシンを後ろから見ると、車体フロア面が持ち上がるようにして上方に反り返っている部分のことです。ちょっと年代は古いですが、次の写真は1992年のBenetton B192というF1マシンで、赤い鎖線で囲った部分がディフューザです。

F1におけるディフューザの搭載例
フロア(車体底面)の前方から流入した空気は、ディフューザを通過する時に空間が拡がることで流速が上昇します。そして、下図に示す平面フロア後端の周辺圧力が低下することで、フロア上面との圧力差によるダウンフォースが発生します。

ディフューザによるダウンフォース発生メカニズムの概念図
このようなメカニズムでディフューザはダウンフォースを発生するのですが、果たしてミニ四駆では有効と言える程の効果が期待できるのでしょうか?


超低レイノルズ流れという障壁


それではここで前回と同様に、ムーンクラフトで空力エンジニアとして活躍している神瀬氏にアドバイザーとして登場してもらいましょう。

神瀬エンジニアの見解

自分
『翼型ウイングに続いて今度はディフューザについて。まず、僕の結論から言うと、ディフューザはミニ四駆においては十分な効果を期待できないと思う。その理由は次の3点。

①絶対的な速度が低い
②効果が見込めるディフューザ形状を作るのが難しい
③路面とフロア間の距離が安定しない

神瀬エンジニア
『ところで、ミニ四駆だとディフューザの代表長さはどれくらいですか?』


自分
『おおよそだけど、MAシャシーで最大80mmくらい。』

MAシャシー底面部
(引用元:タミヤ公式サイト)

神瀬エンジニア
『車速が最大30km/hでしたよね?ちょっと待ってください(←何やら計算を始める)。レイノルズ数を計算してみましたが、およそRe=4.42×104で、超低レイノルズ流れに相当します。通常のレーシングカーのレイノルズ数のレンジがRe=105~106なのに対し、ミニ四駆の場合は2桁もオーダーが小さいことになります。』


自分
『2桁も違うと、だいぶ大きな差だね(汗)。』


神瀬エンジニア
『なので、このような超低レイノルズ数だと、レーシングカーに期待されるレベルの効果が得られるかというと難しいと思います。ただ、非常に安定した走行条件下であれば、数グラム程度のダウンフォースが得られるかも知れません。』


自分
『ちなみにミニ四駆がジャンプすると…』


神瀬エンジニア
『お察しの通りダウンフォースは一切発生しません。地面あってのディフューザなので。僕の結論としては、ミニ四駆にディフューザは無いよりはあった方がいいけれども、過度な期待はできないかな…という感じです。ただし、ディフューザは使い方によってはリフトフォースを発生し兼ねないので、F1のような大きな形状のディフューザである必要はないです。』


ディフューザ~まとめ


『ディフューザによって有意なダウンフォースを得ることができのか?』という問いに対する結論は『非常に限定的』というものでした。

ミニ四駆の走行するサーキットの路面は完璧な平坦ではなく、最低地上高が絶え間なく変動します。このため、安定した効果を期待することはやはり難しいと言えそうです。今回、ディフューザについては少々厳しい結論に至りましたが、超低レイノルズ流れに関する調査の中で非常に興味深い文献を発見しました。

次回のブログではエアダム型ウイングについて考察しつつ、その文献の内容についても紹介したいと思います。次回更新もどうぞお楽しみに!

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