2020年5月26日

F1的な就職活動のススメ【F1とメディア】

[前回のブログ]
[重要なお知らせ(Important notification)]


はじめに。


今回のブログのテーマは『F1とメディア』です。Twitterで『F1を始めとしたモータースポーツのメディアやジャーナリストを目指している人ってどれくらいるのかな?』と呟いたところ、想像以上の反響があったのでこのブログ記事を執筆することにしました。

イギリス人F1ジャーナリスト
(引用元: Sam Collins's twitter)
まず最初に、これを読む皆さんにお伝えしておかねばならないことがあります。それは、僕自身にメディア・ジャーナリストの経験はなく、あくまで一介のエンジニアでしかないということです。そんな僕がF1やモータースポーツのメディアについて書くことは、実際にメディア・ジャーナリストとして活躍されている方々に対し、とても畏れ多いことだと考えています。

それゆえ、このテーマで書くことはこの一回限りとするつもりです。また、今回のブログの目的は、ジャーナリズムの世界を目指す若い人たちを勇気づけること、将来に向けてキッカケとなるヒントを、F1の世界にいる側の人間として提供することです。そして執筆に当たり、メディア・ジャーナリストとして活躍されている方々へ最大限の敬意をここに表しつつ、執筆することをご理解頂ければ幸いです。

少々堅い書き出しとなってしまいましたが(汗)、最後まで読んで頂ければ幸いです。

まずは課題から洗い出してみよう。


僕がF1の世界で働くようになって以来、『F1ジャーナリストになってみたいが、どうすれば良いのか分からない…』という嘆きにも近い質問をもらうことが多く、そのことが強く印象に残っています。社会人経験のない学生にとってはそもそも進学の悩みの方が大きく、考える余裕がないでしょうし、社会人として働いている人にとっても就職活動で希望の会社に入れなかった…など様々な事情があると思います。

そんな悩みを抱えている方々に代わり、僕なりの考え方を今回のブログでは共有してみたいと思います。

では、F1ジャーナリストの世界を目指す上で、どんな能力やスキルが必要になりそうか?細かい課題は数多あるかと思いますが、僕なりにその課題を次のように大きく三つの課題に分け、体系的にまとめてみました。

① 情報収集能力
② 知識力・情報量
③ 情報発信能力


ポイントは『体系的にまとめた』ことで、上の序列はそれぞれの重要性を表してはいません。どういうことか?それを次の図で説明します。

2020年5月14日

僕の未来とF1と。

[重要なお知らせ(Important notification)]


変わりゆく世界の中で。


『もうこれまでの世界ではなくなってしまうのかも知れない。』

こんなことを人生で二度も考えることになるとは……かつての僕は想像できただろうか?一度目は2011年の東日本大震災と原発事故。放射能汚染が東北地方を中心に東日本でも問題となり(もちろんそれは今でも決して解決できていないのだけれども)、小さい可能性ながらも自分の生命が脅かされた瞬間だった。

(引用元:F1公式サイト)
そして、今回の新型コロナウイルスの世界的なパンデミック。

ブログを書いているこの瞬間もたくさんの人が様々な苦難に直面していると思う。幸いなことに、ロックダウンで封鎖された世界でも僕は健康に過ごすことができているが、万が一感染した場合には自分の生命が助かるという保証はどこにもない。

そんな状況の中、残念ながらネットやニュースには真偽の分からない情報、批判、批難に溢れている。その真偽や賛否をここで論じても全く不毛なので、そのことには触れず、これからの未来をどう考えると良さそうか?前進する気持ちを鼓舞するためにも、自分の考えをちょっとだけまとめてみたいと思う。

僕たちが想像する世界。


今、あなたはどんな夢を持っていますか?その夢を達成するためにどんなことを頑張っていますか?そしてその夢はどんな風に達成されると想像していますか?

『明確にではないけど、何となく…』とか『いや、全く想像もつかん(汗)』など、色々あると思うけれども、ここで僕の最近のツイートを紹介したい。


ここで僕が言いたいのは、実際に訪れるであろう未来は僕たちが想像する以上の世界になることがほとんどだと言うこと。願わくばその世界は良い方向であって欲しいけれど、コロナウイルスのパンデミックや震災など悪い方向もある。

残念ながら、自分たちがどんなにあがいてもコントロールできない状況は確実にある。けど上にも書いたように、その世界が自分が想像する以上に、なおかつ良い方向に実現する可能性だってもちろんある。


過去を振り返ってみると。


現役での大学受験では全て不合格となり浪人したこと。 でも、諦めずに一年の浪人を経て慶應理工に合格できたこと。

レーシングカートに没頭するあまり留年しそうになったこと。 でも、大学院入試ではトップ10に入る成績で合格できたこと。

新卒で三菱自動車に入社してキャリアスタートしたこと。 でも、二度目のリコール隠し事件を当事者側として経験したこと。

念願叶って三菱WRC活動に仕事で関わる機会に恵まれたこと。 でも、2006年に三菱がWRC活動からの撤退を決定したこと。

日産自動車入社直後は自分の実力の無さを痛感して泣いたこと。 でも、本当に素晴らしい仲間に恵まれて成長できたこと。

フランスのエンジニアリング会社に転職し、ヨーロッパに移住したこと。 でも、上司と衝突して期せずして解雇されたこと。

失意の中、F1の世界にエンジニアとして入れたこと。 でも、今はコロナウイルスによりF1が開幕できずにいること。

でも、でも、どうだろう?

過去を振り返れば、決してネガティブなことだけじゃなくて、ちゃんとポジティブなことが起きていて、幸運なことにポジティブな方でちょっと貯金が出来ているじゃないか。

自分の限界は自分の想像の外に。


今はちょっとネガティブなことが起きている。けど、その先には僕たちが想像する以上のポジティブな何かがきっと待っているんじゃないだろうか?

それはどんなポジティブ?

いや、そんな野暮な想像はやめよう。それは想像を超えてくるに違いない。だから今は考えずに突っ走る時なのだと思う。ポジティブな何かがいつか起きると願いながら、小さなことでも良いから可能性を追い求めてみようじゃないか。自分がどこまで出来るのだろうか?その限界はどこ?そんな考えも想像の外に置いてしまえばいい。

RP20 (引用元:F1公式サイト)
僕は新型コロナウイルスのパンデミックが起きたことで、F1というスポーツがたくさんの人たちの心を潤していることを知った。世界中から求められていることを知った。だから、これからどんなネガティブなことが起きようと、それでもF1は続いていく訳だ。

そして僕の責務はF1エンジニアとしての仕事を続けていくことだ。

だから、約束しよう。ファクトリーのシャットダウンが解除され、仕事が再開されたら僕は再び全力で仕事に取り組もう。

F1を待ちわびるファンのみんなのために、新型コロナウイルスではない、歓喜のパンデミックを引き起こしてみせようじゃないか。

[おわり]



2020年5月1日

ミニ四駆の運動と制御-第8章-

[前回のブログ]
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RCバギーでは必須の空力デバイス


これまでのブログでは翼型ウイング、ディフューザについて考察しました。その結果、どちらも有意ある効果を得ることは難しいということが分かりました。それではエアダム型ウイングはどうでしょうか?

シューティングプラウドスター
(引用元:タミヤ公式サイト)
エアダム型ウイングはRCバギーの世界では必須アイテムとも言える空力パーツですが、その目的は一つではなくジャンプ時の姿勢制御にも活用されています。今回のブログでは、このようなウイングの特徴と理論について考察します。

エアダム型ウイングの特徴


まずはエアダム型ウイングがどのようにしてダウンフォースを発生するのか?そのメカニズムについて簡単に解説してみたいと思います。翼型ウイングがウイング下面に負圧を発生させることでダウンフォースを得る一方、エアダム型ウイングでは上面に正圧を発生させることでダウンフォースを発生させます。

エアダム型ウイングにおける空気流れのイメージ
(引用元:Team AZARASHI)
上図に示す様に、ウイング上面において空気を停留させる流れにすることで正圧が発生します。ウイング下面の流れに関わらず、上面の正圧さえ確保できれば容易にダウンフォースが得られることから、RCカーやミニ四駆などで有意ある効果が期待できそうです。しかし、その形状からも想像できるように、空気抵抗の大きさが想定以上に最高速度の低下を招く懸念がありそうです。


エアダム型ウイングと揚抗比の関係


一般的な話で言えば、旅客航空機にエアダム型ウイングは採用されていません。なぜなら、得られる浮力(Lift Force)の大きさに対して空気抵抗力(Drug Force)が小さいことが旅客航空機には求められるからです。この浮力と抵抗力のバランスを評価するためのパラメータとして、揚抗比L/D(浮力÷抵抗力)が用いられます。

それでは例によってムーンクラフトの空力エンジニアの神瀬氏に登場してもらい、エアダム型ウイングとその揚抗比についての見解を聞いてみましょう。

神瀬エンジニアの見解

自分
『空力効果を得ることが難しい速度域で走るミニ四駆でも、エアダム型ウイングならそれなりに効果が見込めるのでは?と考えたのだけれども、その点についてはどう考える?』


神瀬エンジニア
『ミニ四駆の速度域での超低レイノルズ数流れにおいては、エアダム型ウイングが一番効果が見込めると思います。ミニ四駆のボディ形状なども考慮すると、この手法が最も手っ取り早いと言えますね。』


自分
『懸念事項は?』

神瀬エンジニア
『空気抵抗が翼型ウイングやディフューザに比べると大きくなることですね。揚抗比としては不利になりそうですが、実は揚抗比に関してちょっと興味深い研究結果があるんですよ。』

アメリカのハーバード大学が開発した小型飛行ロボット
(引用元:ハーバード大学公式YouTube)

自分
『ほう。それは?!』


神瀬エンジニア
『近年、昆虫型マイクロ飛行ロボットの研究開発が盛んなのですが、トンボの羽のような薄板形状ウイングが採用されています。そして、超低レイノルズ数流れにおいては、揚抗比が翼型ウイングよりも良いという結果が得られているそうです。』


自分
『それは興味深い…』


神瀬エンジニア
『はい。エアダム型ウイングの空気抵抗が、翼型ウイングのそれと比べて小さいということはないはずですが、もしかしたら板形状ウイングの一種とも言えるエアダム型ウイングの揚抗比は思うほど悪くないかも知れません。』


エアダム型ウイングのまとめ


エアダム型ウイングについて『有意なレベルのダウンフォースの獲得が見込める』という結論を得ました。また、板形状ウイングは翼型ウイングに対し、超低レイノルズ数流れでの揚抗比において優れるという研究結果があることも分かりました。

さらに第6章~第8章の考察をまとめると『ミニ四駆にはエアダム型ウイングが最適』だと言えると思いますが、それではミニ四駆でそれをどう実現するのか?次回のブログではその実践例を紹介します。

次回更新もどうぞお楽しみに!

[つづく]