2018年12月23日

僕とF1とRCカーと【別れと新たな出会い編】

[前回のブログ]


RCカーとの別れ


幼少の頃に出会ったRCカーでしたが、その後RCカーをずっと楽しんでいたワケではありませんでした。小学生となり、おもちゃのRCカーを卒業した僕は、父が作った電動RC(恐らくタミヤのポルシェ934ターボRSR)を家の前でしょっちゅう走らせてはいたものの、少なからずお金のかかる趣味だったことや、自然と触れ合う機会を与えたいという父の方針もあり、小学校3年生にもなるとRCカーから遠ざかってしまいました。

(引用元:タミヤ公式サイト)

自然と触れ合うという目的で、父は家族をアウトドアキャンプに連れ出すのですが、そのアウトドアが一般的なキャンプよりも少々サバイバルなキャンプだったため『できれば行きたくないなー』とか『RCカーやMSXのゲームで遊びたいなー』と思ってばかりいました。

そんな僕に、追い打ちを掛けるような事態が待ち受けていました。親の教育方針で中学受験をすることになったのです。受験塾にも通うことになり、自分の意思でRCカーを楽しむ時間はなくなっていきました。そして、そんな状況が続いた結果、僕のアタマの中からRCカーの存在は徐々に消え去っていったのです。


ミニ四駆との出会い


受験勉強が始まるとともに、RCカーから遠ざかった生活を過ごすことになるのですが、そんな僕に身近で手軽に楽しめるモノが現れます。そう、それがミニ四駆でした。子供のお小遣いでも十分に楽しめますし、工夫を凝らせば凝らすほどマシンが速くなることもあって、受験勉強そっちのけでドンドンとのめり込んで行きました。

時代はまさにドラゴン三兄弟やダッシュ四駆郎!の全盛期。塾に通いつつも、アタマの中はサンダードラゴンやダッシュ1号エンペラーのことばかり。こんな僕にとって、受験勉強よりもミニ四駆をいじる時間の方が圧倒的に幸せだったのは言うまでもありません(笑)。ミニ四駆に狂酔していた僕は、1988年に初開催されたミニ四駆ジャパンカップにも参戦します。当時のジャパンカップに参加するには整理券が必要だったのですが、平日の配布だったために、母に懇願して取りに行ってもらったことを今でも良く覚えています。

30年前にも会場で先行販売されたエンペラーを買っていた…

しかし、中学受験の本番が近づくにつれ、そのミニ四駆からも遠ざかってしまうことになります。両親は僕からミニ四駆やテレビを取り上げ、自分の好きなものを自由に楽しむことができない時代が始まりました。中学受験を経験したことはその後の人生においてプラスとなったことは間違いありませんが、一方で好きなことに没頭できないことを僕はとてもツラく感じていました。

そのことが原因とは言いませんが(汗)、小学生の僕は中学受験へのモチベーションを十分に上げることができず、結果として中学受験において全敗するという結果に直面します。どうも僕は人生を器用に進めることができない男らしく、中学受験を含む、その後の全ての受験、つまり高校、大学、大学院の受験を経験することになります…。

今思い返せば、一時的にでも良いから必死に勉強し、大学付属の中学・高校に進学しておけば良かったなーと思います。そうすれば趣味に没頭する時間をもっと作ることができたはずですが、まさに後悔先に立たず。今となっては、長きに渡る受験生活が僕のメンタルを少しはタフにしてくれた?!と前向きに捉えるようにしています(笑)。


レーシングカートとの出会い


趣味の時間が自分の意志で確保できるようになったのは大学への入学後でした。大学生にもなれば、時間をどう使うのかは基本的には本人次第ですし、アルバイトでお金も稼ぐこともできます。そこで始めることにしたのが…RCカー…ではなく、レーシングカートでした。
実は1990年のF1日本GP以降、僕が胸に抱いていた夢はF1ドライバーになることだったのです。大学生になり、時間とお金を作ることができるようになったことで、ずっと憧れていたレーシングカートの世界に足を踏み入れることにしたのです。

(引用元:ヤマハ発動機公式サイト)

最初にお世話になったカートショップはTOM'Sの社屋の一角に拠点を構えていたTOM'S Karting。そこで初めて買ったカートフレームはFirstのMonzaで、エンジンは定番のKT100SDでした。1998年の2月にカートを購入し、その3ヶ月後には新東京サーキットで開催されたカートレース(YSOクラス)への初参戦を果たします。

残念ながら現在は自分のカートを所有していませんが、今も趣味として大いに楽しんでいます。ドライビングスキルと体力維持には最適なスポーツですし、いずれはFIA-F4にスポット参戦するという密かな野望も持っています。もちろん、インディペンデント枠ではなく、若手ドライバーたちにガチ勝負を挑むつもりですが(笑)。

RCカーへの回帰


大学時代から始まったレーシングカートのレース活動も、社会人として多忙に働く頃になると細々としたものになってきました。そんな中、あることがキッカケでRCカーへと回帰することになります。その回帰によって、幼少の頃には気づくことのなかったRCカーの素晴らしさに気付くことになるのです。次回のブログでは、RCカーへと回帰することになったキッカケ、僕が気付いたRCカーの素晴らしさ、その素晴らしさから学んだことを振り返ります。

[つづきはコチラ]


2018年11月25日

僕とF1とRCカーと【出会い編】


本能とRCカー


人は生まれて間もない頃から、ある行動をするようになります。

それは性格や性別に関係なく全ての人に共通する行動です。その行動が世界を学ぼうとする探求心によるものなのか、それとも自分を脅かす存在への警戒心によるものなのか、その行動のモチベーションの源泉が何であるのか僕には分かりません。ただ、確実に言えることは、その行動はとても本能的なものであり、大人に成長した後でも続くということです。

その行動とは『動くモノを見つめる』ことです。

生まれたばかりの赤ちゃんは視界が鮮明でないそうですが、視界に動くものを見つければ、それを目で追い続けます。さらに自我が形成され、自分に手があることを学ぶと、動くものに手を伸ばして触れようとします。それが一体何なのか?果たしてそれは自らが御すことが可能なのか?それを知ろうとする欲求に駆られるのです。

しかし、人が成長し学校や社会で生きるようになると、その本能はマナーや社会性の下で抑制されることになります。このようにして本能を抑えつけてしまうことは(たとえそれが無意識的であったとしても)、少なからずストレスを伴うでしょう。社会で生きる一員として、このような本能の抑えつけが少なからず必要であるのは言うまでもありませんが、そのストレスを発散したいという欲求を強く持つ人がいても不思議ではありません。

そんな欲求を満たすのに最適なもの。それが『モータースポーツ』です。

一般にモータースポーツと言えば、サーキットでレーシングカーを走らせる競技のことを意味しますが、今回のブログテーマである『RCカー』によるレースも立派なモータースポーツです。RCカーの最大の魅力は『動くモノを見つめる』という欲求を満たせるだけでなく、その動くモノを自らコントロールできることでしょう。また、実車でのモータースポーツに比べ、圧倒的に安価に楽しめることも魅力の一つです。

現在の愛車TB04PRO(引用元:タミヤ公式サイト)
かくいう自分もRCカーの魅力に虜になった一人なのですが、僕がF1エンジニアとなる道程でRCカーという趣味が多大な影響を与えたことは間違いありません。今回のブログテーマでは、僕とRCカーの歴史、そしてRCカーから学んだことを振り返ってみたいと思います。


RCカーとの出会い


僕が初めてRCカーと出会ったのは、残っている写真を確認する限りでは2歳になった頃のようです。下の写真は1979年11月4日に撮影されたもので、撮影したであろう父に向かって嬉しそうな笑みを浮かべています。

1979年11月4日の僕(満2歳)
写真が撮影された日から推察すると、このRCカーは父が僕に誕生日プレゼントとして買い与えてくれたようです。このRCカーは伝説のラリーカーとして名高いランチア・ストラトス。その斬新なデザインがとても印象に残っています。
確証はないのですが、どうやらこのRCカーはニッコー製のようです。プロポの前進スイッチをONにするとずっと前進し続け、ステアリングは当時としては珍しい(?)ホイーラータイプのプロポでした。


生まれて初めて与えてもらったRCカーは決して本格的なものではありませんでしたが、僕にとっては大切な宝物でした。結局、ボロボロになって壊れるまで夢中になって遊びつくしました。今となってはもう手元にありませんが、RCカー遊びは『動くモノ大好き!』という僕の本能的な欲求を満たしただけでなく、未来に向けて夢の種を僕の心に蒔いてくれていたように思います。




僕と父とRCと


『この親にしてこの子ありき』こんな言葉が、僕と父との関係性を表すのにぴったりな表現かも知れません。父も僕と同じようにRCに魅せられた一人でした。ただ、僕と決定的に違ったのは、父のカバーするRCの範囲が僕よりも広かったことでしょう。僕はRCカーのみでしたが、父の場合、RCカーは片手間で飛行機、グライダー、ヘリコプターなどの空モノがメインだったのです。

父の部屋は雑誌『ラジコン技術』で溢れ、休日には自作機体の設計・製作に勤しんでいました。父は大学で電気電子工学を専攻していましたが、畑違いの航空工学も独学で修得してしまいました。実際には比べようもないのですが、父のRC飛行機への情熱は僕のRCカーへの情熱を大きく上回っていたと思います。なぜなら、父は最終的にラジコン技術の編集部から寄稿を依頼される程だったからです。

ずっと前にその記事を見せてもらったことがあるのですが、本名ではなく母の旧姓と自分の名前を組み合わせたペンネーム(工藤勉)で寄稿されていました。父によれば、当時勤務していた会社(富士通研究所)に寄稿(副業?!)をしていることを知られたくなかったからだそうです(笑)。

ラジコン技術(引用元:電波社公式サイト)
僕が幼少の頃、家族は東京都町田市にある鶴川団地に住んでいました。当時、団地の近くには見晴らしの良い裏山のような場所がたくさんあり、RC飛行機を気軽に飛ばすことができました。休日になると、父は僕を連れてその裏山に行き、自らが設計したRC飛行機のテスト飛行に勤しむのですが、空を飛ぶ機体を真剣な眼差しで見上げる父の横顔(でもやっぱり口は開いていたと思う)、エンジンからの排気ガスの匂いが今でも記憶に残っています。

改めて振り返ってみると、父もゼロから何かを創造することが大好きな人でした。それは趣味だけでなく、仕事でも同じだったようです。富士通研究所での仕事に満足できなかった父は、富士通研究所を退職し独立します。決して意識していたワケではないのですが、僕も日産自動車を飛び出し、フランスでの修行を経てF1チームに加入するなど、僕も父とどことなく似たような人生を送っているようにも思います。『この親にしてこの子ありき』とは本当によく言ったものですね(笑)。

ちなみに余談ですが、現在の父はすでに仕事を引退して実家でのんびりしています。そして父の会社(コーダ電子株式会社)は親不孝者の僕に代わり実の姉が継いでくれています(笑)。


RCとのしばしの別れ


意外かも知れませんが、ずっとRCを楽しむ環境が続いていたわけではありませんでした。それは父の興味が全く異なる趣味へと向いてしまったことが原因でした。父に何があったのかは知りませんが、急にアウトドアライフへと目覚めてしまったのです(汗)。父にとって僕のRCカーへの想いなどはどこ吹く風。

しかし、自分のお小遣いでRCカーを楽しむことは難しく、タミヤRCカーグランプリに出場するなど夢のまた夢。結局、長きに渡ってRCカーとは縁のない生活を送ることになるのです。次回のブログでは、25年にも及ぶ僕のRCカー黎明期にどんなことがあったのか?そして、RCカーに代わり僕の本能的欲求を満たしてくれる、さらに小さなモータースポーツ(そうアレです!)との出会いを振り返ります。

[つづきはコチラ]

2018年11月18日

F1的な就職活動のススメ【F1就職最前線②】

[前回のブログ]
[重要なお知らせ/Important Notification]


僕からのメッセージ


『F1的な就職活動のススメ』もいよいよ最終回となりました。今回のブログでは、契約に至るまでのプロセスを説明しつつ、選ばれるためにはどんな存在であることが求められるのか?ということについて書こうと思います。


そして終わりに僕からのF1を目指す人へのお願いとエールで締めたいと思います。少々長文になりますが、最後までお付き合いください。また、今回の連載テーマも最後までお読み頂き本当にありがとうございました。

それでは最終回です!

まずは応募してみよう


以前のブログでも書いたように、自分がF1でどんな仕事をしたいのかを明確にする必要がありますが、ここではそれが明確になっていることを前提に話を進めて行きたいと思います。

さて、現在では多くのF1チームが公式サイトで採用情報を告知し、応募を募っています。事前にユーザー登録をする応募方法や、人事のメールアドレスに書類を添付して送付する応募方法など、いくつかスタイルがありますが、詳しくは各チームの公式サイトを確認してください。参考までに各チームの採用サイトへのリンク(2018年11月現在)を以下にまとめてみました。
  1. Racing Point Formula1 Team
  2. Mercedes AMG Formula1 Team
  3. Mercedes AMG High Performance Powertrains
  4. Scuderia Ferrari Formula1
  5. Red Bull Racing
  6. Renault Sport Formula1 Team
  7. HAAS F1 Team
  8. Scuderia Toro Rosso
  9. Williams F1 Team
  10. Sauber F1 Team
  11. McLaren Racing
なお、応募のルートはいくつかあり、公式サイト以外にもLinkedInにある各チーム公式ページなどを経由して応募することが可能な場合もあります。個人的にはチームの公式サイトを経由して応募する方が良いかなと思いますが、LinkedInは情報収集に役立つこともあるので登録しておくことをオススメします。もちろん僕も登録していますが、今ではF1関係者との繋がりをたくさん構築することができました。

(引用元:Mercedes AMG F1 Team公式サイト)
さて、各F1チーム公式サイトの求人広告チェックを続けていけば、そのうち狙いとするポジションの広告が見つかると思います。その時は躊躇することなくポチっと応募しましょう。ネット経由なので応募手続き自体はあっという間に終わります。手続きが終わると『あなたの応募を受付けました』という内容の自動返信メールが送られてきます。あとは正式に人事からの返答を待つのみ!です。

面接で最も重要なのは…


CVもちゃんと作成し、応募したポジションにふさわしい実力も備えているのであれば、応募から"一週間"も経たずに面接の日程調整の連絡が入るはずです。僕の経験上、面接に呼ばれる時はたいてい素早く連絡が入ります。逆に一週間以上も経過して何も音沙汰がなかった場合、望ましくない結果であることがほとんどです。

仮に面接に呼ばれたとしたら、次に気になるのは面接ではどんなことを聞かれるの?ということではないでしょうか。もし、エンジニアとしてF1を目指している場合、基本的に面接は技術面接になると考えて良いと思います。自身の技術レベルが果たして本当にチームが求めるレベルにあるのかどうか?それを徹底的にチェックされます。場合によっては筆記テストが課されることもあります。

では、そんな厳しいチェックがなされる面接に臨むに当たって、最も大切なことは何でしょうか?

それはどんな質問が投げかけられようとも、エンジニアとして技術的に的確な回答ができることです。これは一般的な面接対策でどうにかなることではなく、日頃から技術開発の仕事と真剣に向き合っていること。これが一番の対策になると思います。将来受けることになるであろうF1チームとの面接。日々の仕事に漫然と取り組むのではなく、来るべき時に備えてエンジニアとして技術と真正面から日々向き合うことをオススメします。


"Be the best"


面接も無事に終わり、あとは結果連絡を待つのみ…。果たして契約オファーがもらえるのか?面接が終わった日から落ち着かない日々が始まります。ところで、F1チームから面接の機会が与えられたことには意味することがあります。それはたくさんの応募者の中から最後に選ばれた5~10人ほどの中に入れたということです。

それを知ると仮に今回がダメだったとしても今後に向けた可能性を十分に実感することができるかと思います。確かにそれは間違いありません。しかし、最終的にF1チームからのオファーを勝ち取る人はどんな人なのでしょうか?

F1チームへの応募者は英国名門大学の出身者が多数
F1に限りませんが、ポジション毎に雇用するスタイルの欧米ではそのポジションで採用される人数は一人です。多くの応募者の中でたったの一人。そう、それは応募者の中で絶対的にベストな存在である人だけが契約オファーを勝ち取れることを意味します。

当たり前と言えば当たり前ですが、そんな激しい就職を勝ち抜いたベストな人材が集まった集団。それがF1チームという存在なのです。もし、F1の世界を目指すのであれば常に意識しておかねばならないこと、それがこの章のタイトルとして書いた"Be the best"なのです。

終わりに


F1的な就職活動のススメ、いかがでしたでしょうか?今後、F1の世界を目指す人が余計な遠回りをしなくて済むようにと思い、出来る限り参考となる情報とアドバイスを書いたつもりですが、少しでも参考になれば嬉しい限りです。

最後にこのテーマでブログを書こうと思ったキッカケと僕の想いを書こうと思います。まずキッカケについてですが、たくさんの方々からこんな質問を受けたことでした。

『どうしたらF1の世界で働けるようになりますか?』

これまでは時間の許す限り、相手の立場も想定しつつアドバイスをしてきましたが、個別にアドバイスをすることには時間かつ体力的に限界があります。ならば、少しでも多くの人に参考となる情報を届けたいと考え、このテーマでブログを書くことを決めました。

2018年シーズン後のパーティにて
一方、改めて気付いたこともあります。それは質問をしてきた方々にとって本当の正解を僕は持ち合わせていないということです。本来、その正解は質問をしてきた方の中にしか生まれ得ないもののはずですから、残念ながら僕がどんなに頑張ってアドバイスをしたり、情報発信をしたところで参考程度にしかならないのです。

だから、これからF1を目指す人へ僕からお願いがあります。

僕がこれまでに執筆してきた『僕がF1エンジニアになるまで』、『F1的な就職活動のススメ』は僕が経験してきたストーリーでしかありません。F1への道程をどう築き上げていくのか?その答えは自分自身の中にあります。自分自身の内なる可能性を信じ、その答えを自分自身で真剣に考え、自分自身のストーリーを築き上げていってください。

これからF1を目指して頑張る皆さんの健闘を心から祈っています。そしていつの日か、F1の世界で皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

[おわり]

2018年11月10日

F1的な就職活動のススメ【F1就職最前線①】

[前回のブログ]
[重要なお知らせ(Important notification)]


F1の就職最前線とは?


いよいよ『F1的な就職活動のススメ』も最終章。今回のブログではF1就職最前線と題し、F1業界ではどのような採用スタイルを取っているのか?応募者数ってどれくらい?などの疑問に答えつつ、契約獲得に至るまでの経緯を紹介していきます。

(引用元:Williams F1公式サイト)
さて、決して簡単に開かないF1への門ですが、それでも諦めずにその門戸を叩き続ける情熱と根気が必要になります。しかし、かつて僕がやっていたように闇雲に叩いても意味がありません。そして、これからF1の世界で働くことを目指す人に余計な遠回りをして欲しくありません。

そこで、F1を目指す上で理解しておいて欲しいことを最初に書きたいと思います。

F1への情熱は…


突然ですが、もし、あなたがF1の世界で働くことを真剣に考えているのであれば、F1ファンとしての情熱を一旦は忘れる必要があると僕は考えています。『え?!なんで??』と思うかも知れませんが、これには明確な理由があります(その理由については後述)。

華やかな世界のF1。レース部門は世界中を転戦し、開発部門はファクトリーで最先端の技術開発に勤しみ、メカニックはピットで迅速かつ正確にマシンを組み上げ、レースではトップドライバー達が激しいバトルを繰り広げる…こんな世界で働きたいと真剣に考えている人は世界中にたくさんいます。

そんなF1の世界に憧れる人に向け、Williams F1 Teamが公式サイト上でキャリアに関する アドバイスのページを設けていることをご存知でしょうか?そこには次のようなことが書かれています。

Williams F1 Teamからのアドバイス①

[Question]
"I am GCSE student and would like advice on the best route to enhance my opportunity to achieve a career in Motorsport?"
[Answer]
"We would advise you first and foremost to give your best at school, whichever career path you chose. It’s also important to learn, particularly for a career in F1, that most often success comes from sustained hard work as opposed to occasional displays of brilliance"

[質問]
私は高校生なのですが、将来モータースポーツでのキャリアの可能性を高めるにはどうしたら良いかアドバイスを下さい。
[回答]
真っ先にアドバイスしたいことは、あなたがどんなキャリアを選ぼうとも、学校でベストを尽くすことに他なりません。特にF1でのキャリアを目指すというのであれば、一過性の努力による成果ではなく、継続的な努力こそが最終的な成功に繋がることを知っておくと良いでしょう。

さらに、この続きにはかなりストレートなアドバイスが書いてあります。どの大学が望ましいのかなど、具体的な学歴についても躊躇なくFAQで紹介するあたり、F1が常に最高の人材を求めているかが良く分かるかと思います。ある意味、イギリスは日本以上に学歴社会なのかも知れません。

Williams F1 Teamからのアドバイス②

[Additional Answer 1]
"Specifically though I would advise you follow the numerate disciplines for your GCSEs and A-Levels i.e. Maths (essential), Physics, Chemistry, Design & Technology, IT etc. You should eventually aim to do a degree in an engineering discipline i.e. Mechanical, Automotive or Aeronautical. As for choice of University or college, with Cambridge, Imperial, Brunel, Bristol, Loughborough and Southampton being popular high-end choices for F1 hopefuls."
[補足回答1]
もっと踏み込んでアドバイスをすると、高校での理系科目(数学、物理、化学、設計技術、IT分野)において最良評価を取れるようにすると良いでしょう。また、最終的には工学系の学位(機械工学、自動車工学、航空宇宙工学など)の取得を目指しましょう。大学の選択についてはケンブリッジ大学、ロンドンのインペリアルカレッジ、ブランネル大学、ブリストル大学、ラフバラ大学、サウサンプトン大学などの名門大学への進学が望ましいでしょう。

[Additional Answer 2]
"It is also important to get practical experience, so try to use your vacations or gap year etc to get some. This could be paid employment in a garage or workshop or even voluntary labour for a junior race team. When you get to University joining the Formula Student Team is a great way of getting really good hands-on experience, as well as being a lot of fun."
[補足回答2]
実践経験を積むのもまた重要なことです。そこで大型連休などを活用して実務経験を得られるようにしてください。ガレージやワークショップでの給与付きの仕事でも良いですし、下位カテゴリのレースチームでのボランティア業務も良いでしょう。また、大学に入学したら、学生フォーミュラチームに加入し、楽しみつつも実践経験を積むというのも良いでしょう。

さて、この章の冒頭で『F1ファンとしての立場は一旦は忘れるべき』と書きましたが、ここでその理由について書きたいと思います。

Williams F1 Teamのアドバイスは、F1チームでの仕事を得るためにどんな努力をすれば良いのか?その具体的な方策を示してくれていますが、そこから汲み取れるメッセージは『あなたの情熱をあなた自身の切磋琢磨に費やして欲しい』というものだと思います。

(引用元:Williams F1 Team公式サイト)
その切磋琢磨はいつも楽しいものではなく、どちらかというと厳しくも地味な道程です。あえて厳しい言い方をしますが、プロフェッショナルとしてF1チームに関わることを目指すのであれば、趣味としてF1に関わることと根本的に異なる世界に身を置くことを覚悟しなくてはなりません。

今まさにこの瞬間もその情熱を未来に向けて注いでいる人が世界にはたくさんいますから、これも一つのコンペティション(競争)です。もちろんF1ファンであることを辞める必要はありませんが、競争相手に負けないためにも、自分がF1ファンであることを忘れるくらい自己研鑽に励む必要があると僕は考えています。これがF1ファンとしての立場を一旦は忘れるべきと言う理由です。


競争を勝ち抜くには?


上の章でも述べたように、本当にたくさんの人がF1の世界を目指しています。特に競争が激しいのは大学新卒や若手の人材市場です。新卒学生の応募の多いジュニアエンジニアのポジションだけでなく、インターンシップのポジションになると1名の枠に300名以上の学生から応募があるそうです。

一方で僕のように実務経験のある場合も簡単ではありません。応募数はさほど多くありませんが、それでも応募倍率は100倍近くはあります。加えてF1の業界内にだけでなく他業界から熟練のエンジニアがこぞって応募してくるので、これもまた簡単ではありません。

『そんなに大変なのか…自分には無理かも…』

そう思う人も少なくないかも知れません。しかし!頼もしいことに、こんな熾烈な競争に挑む日本人若手エンジニアや学生も少なくないのです。その中には、すでに複数のF1チームから面接に呼ばれた実績を持つ人もいます。そんな勇猛果敢な若手エンジニアや学生たちに共通して言えるのは、以前のブログで紹介した、4つの大切な要件の4つ目に書いた『技術への探求心』が特に強いことです。

自作のムービングベルト式風洞実験機
例えば、車両モデル、ムービングベルト、ダウンフォース計測装置など全部一人で作り上げてしまうなど、僕も驚かずにはいられないほどモノ造りへの情熱を持っている若手もいます。上の画像はその若手による自作のムービングベルト式風洞実験機です。

確かにF1チームに加入することは簡単なことではありません。しかし、他人にない独自の強みがあれば、この競争を勝ち抜ける可能性はグッと高まると僕は考えています。大学での研究や仕事などを通じて『技術への探求心』を育み、ゼロから何かを生み出す『創造力』を培うこと。ここに紹介した若手エンジニアのように、これを実践することを強くオススメします。

最終章第二弾に向けて…


さて、次回のブログが最終章第二弾にしてF1的な就職活動のススメの最終回となります。F1チームへの応募から契約オファーに至るまでの流れを紹介しつつ、最終的にどんな人が契約オファーを獲得しているのかを書いて最終章を締めたいと思います。

次回の更新もどうぞお楽しみに!

[つづきはコチラ]

2018年11月4日

F1的な就職活動のススメ【履歴書CVとは?】

[前回のブログ]
[重要なお知らせ(Important notification)]


海外就職に必要な書類とは


今回はイギリスなどヨーロッパ圏内での就職活動に求められる応募書類を紹介したいと思います。以前のブログでも応募方法の概要を紹介しましたが、その詳細については踏み込んでいませんでした。そこで、将来ヨーロッパなどの海外で働くことを夢見ている人向けに参考となるであろう具体的な内容を紹介していきます。


まず最初に、応募の際に求められる代表的な書類を紹介しましょう。一般的に必要となるのは以下の三点です。三点目の補足資料は必須ではありませんが、例えば自分の得意分野の紹介プレゼンテーションなど、準備しておくと有利になることもあるのでリストに加えてみました。

  • 履歴書(Curriculum Vitae)
  • 挨拶状(Covering Letter)
  • 補足資料(Support Document)

そして、今回のブログで深掘りして紹介するのはCV(Curriculum Vitae)と呼ばれる履歴書についてです。CVはヨーロッパで就職する際には絶対に求められる重要な書類であり、CVを作らずして就職機会を得られることはあり得ません。エンジニアはもちろん、メカニックなどのポジションでもCVの提出は必須です。また、日本の履歴書と異なりコンビニでテンプレート用紙が売っているわけでもありませんので、自力で作成する必要があります。

そんな自作の自己アピールの履歴書、それがCVなのです。

何を書けば良いのか?


一番最初に浮かんでくるCVについての疑問はその書き方と内容でしょう。一般的に、CVには以下の内容が含まれていることが求められます。ちなみに、画像や写真を紙面に載せてはならず、文字と罫線のみで2ページ以内で構成することがCVの基本的な作法となります。ただし、ドイツ語圏の国では応募者の顔写真を掲載する場合がありますので、各国の慣習に合わせると良いです。

①Personal Information

個人を特定するための情報です。僕の場合は次の六つの情報を織り込みました。

  • 氏名(ローマ字でパスポートと同表記)
  • 現住所(英字表記)
  • 連絡先(メールアドレス・電話番号)
  • 生年月日
  • 家族構成(未婚・既婚など)
  • 国籍

最初の三つの項目(氏名・現住所・連絡先)は必須だと思いますが、残りの三つは必ずしも記入する必要はないと思います。本来は国籍、年齢などで採用判断が左右されるべきではないからです。しかし、日本国籍である僕の場合、イギリスの就労ビザ取得が必須だったため、詳細な情報を含めておきました。

②Professional History

応募時点での職務履歴を書きます。現在から過去の順番でそれまでの経験を以下の情報と一緒に書き出します。

  • 会社名
  • 勤務期間
  • 職務ポジション名
  • 担当業務
  • 成果や貢献した内容

日本の履歴書と決定的に異なるのは、どんなポジションで仕事に従事し、どんな成果を出したのかも具体的に書く必要があることです。成果などについては、要点をまとめた上で箇条書きスタイルで書き出します。

ところで日本人の場合、欧米と比較して転職する回数が少ない傾向にあるので、ずっと同じ会社に勤務している人も多いかと思います。その場合は社内での所属部署での経歴を詳しく書きましょう。

なお、学生の場合は在学中に経験したインターンシップでの職務経験を書くことになりますが、即戦力としての加入を求められる欧米では、このインターンシップの職務経験をCVに書けることが大きなアドバンテージになります。


③Skill&Knowledge

自身のスキルや知識についての情報です。僕の場合は技術的な観点でこの情報を構成してみました。それまでに扱ったことのある技術的なソフトウェアとそのスキルレベル、強みと成り得る工学知識(機械工学、制御工学、電気電子工学など)、語学レベル(英語、日本語、フランス語)などです。

人それぞれアピールポイントも違うので、コレという正解はありませんが、一度自分自身のスキルを見つめ直し、CVに書いておくべきスキルを選定すると良いでしょう。例えば、まだ使用経験が3ヶ月程度のソフトウェアなどはBeginner(初心者)などの脚注を着けるか、経験が十分になるまでCVへの掲載を見送るなどの対応が必要です。

④Educational History

学歴に関する情報です。以下の情報を書きます。ある程度の職務経験がある場合(目安として5年以上)、紙面のスペースを効率的に活用するために最終学歴の記述だけでもOKかも知れませんが、修士号を持っている方は学士号の記載もしっかりと明記します。

  • 最終学歴の学校名
  • 在学期間
  • 取得学位名
  • 卒業成績評点

卒業時の成績評点に関してですが、日本国内共通の評点基準が無いようですので、無理して書かなくても大丈夫だと思います。もし大学での成績が優秀だったのであれば、そのことが分かる記述をしておくのも良いかも知れません。

イギリスの大学を卒業した場合は、必ず大学での評点を記載しましょう。以下の記述はイギリスにおける共通の評点基準です。エンジニアとしてF1チームへの就職を目指す場合、最低でもUpper Second-Class(2:1)が求められることが一般的です。

  • First-Class Honours (First) (70% and above)
  • Upper Second-Class Honours (2:1) (60-70%)
  • Lower Second-Class Honours (2:2) (50-60%)
  • Third-Class Honours (Third) (40-50%)

⑤Reference

推薦人のことをReferenceと言います。必須項目ではありませんが、もし自分を推薦してくれる知人がいるのであれば、書いておくとちょっとだけプラスになることがあります。応募先のチームで働いている知人、大学で卒業研究を担当してもらった教授、過去に働いていた会社の上司などにReferenceをお願いします。

ReferenceとしてのOKをもらえた場合、その推薦人の氏名、会社名、ポジション名、連絡先(メールアドレス)をCVに書きます。その推薦人に問い合わせの連絡が行くことは恐らくほとんどないとは思いますが、ReferenceがあるとCVの信頼度が少しだけ上がります。

以上、5点となります。注意して欲しいのは、ここに書いたのはあくまで一般論であり絶対ではないということです。社会人経験の長い人、就職活動中の学生など、立場によってCVのスタイルは変わりますので、自分の考えるベストなスタイルを模索してみてください。

紙面から伝わる熱意


今回のブログではCVに書くべき内容について解説しましたが、これを読んでいる皆さんはどう感じましたか?CVのことを良く知らなかった人でも『書く内容は日本の場合に比べると少し多いけど、海外ならこれくらいは求められて当たり前なのかもなー…』と感じた人もいるかも知れませんね。とにかく、上に解説した項目を紙面に書き下ろしていけば、それなりの体裁のCVを作ることができると思います。

一方で『CVはちゃんと書いたつもりだし、何度応募しても面接に呼ばれず、お断りのメールばかり…』という人も少なくないと思います。これまでにもイギリス・日本で学ぶ学生さんや後輩に求められCVの書き方についてアドバイスをしてきましたが、全ての人に次のような事を伝えてきました。

『CVを見ればその人の熱意が分かる。』

CV作成は書き手にある程度の自由度と裁量が任されているので、読み手はCVに少し目を通しただけで、書き手がどれほど真剣に書いてきたのかがとても良く分かるのです。良く考えられたCVほど『俺を見てくれ!俺の強みはこれだ!』という熱意を強く感じますし、その人の経歴や強みが理解し易いのです。

このように自分の実力と魅力を余すことなく100%伝えることが、CVを書く上でとても大切なのですが、何度応募しても面接に呼ばれない場合、自分の実力が熱意とともに100%伝わっていない可能性が高いです。このような状況に直面している人は改めて自分のCVを見直すことをオススメします。

CVの改善に終わりはない


F1への就職活動を始めて以来、僕は自分のCVに27回ものメジャーアップデートを重ねてきました。その過程の中で僕が意識するようになったことは次の3点です。

  • 必要十分な情報が抽出され、CVに落とし込まれているか?
  • 文章の表現やレイアウトが美しくまとまっていて理解しやすいか?
  • CVの紙面から自分のプロフェッショナルとしての価値を感じられるか?

このような意識とともに戦略的に考え抜いたCVを作り上げること。これさえできれば、面接に呼ばれる可能性は格段に高くなると僕は考えています。F1に限らず海外での就職を目指している人は、自分自身の珠玉のCVをぜひ作り上げることを強くおススメします。

次回はいよいよF1的な就職活動のススメの最終回となります。最終回は『F1就職最前線』をお届けする予定です。次回更新もどうぞお楽しみに!

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2018年10月13日

F1的な就職活動のススメ【英語の重要性その③】

[前回のブログ]
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身近になりつつある英語の存在


今回のブログでは僕がこれまでに『英語の勉強を続けて良かったなぁ』と感じたことを紹介したいと思います。今、僕は英語を使って仕事をしていますが、ただそれだけで英語を学んだ価値があったとは思いません。F1の世界へと繋がる道程の中で、英語力があったからこそ得られたチャンスがたくさんありました。

僕の好きなOxfordの街並み
ところで、日本に帰国するたびにいつも感じることがあります。それは『来日する外国人がたくさんいるなぁ』ということです。僕が社会人になった時(2003年)にはこんなことを感じたことはなかったのですが、いよいよ日本国内でも英語力を活用するチャンスが増えてきたようです。グッと世界が近づいた感じがして良いと思いますが、皆さんはどうでしょうか?

世界の拡張と情報収集


英語を身に着けたことによって『世界が拡がった』とは多くの人が言っているかと思いますが、僕もそう感じることのできた一人でした。外国人の友達ができた時、その友達と一緒にどこかへ遊びにいった時、そして海外出張などでその友達と再会した時、様々なシーンで世界の拡がりを感じることができましたが、それ以上に重要な世界の拡がりがありました。

それは英語で書かれた『情報の世界』です。

F1エンジニアになって以来、F1へのキャリアについての質問をたくさん頂きましたが、実を言うと頂いた質問の答えの多くはGoogleで英語検索すれば簡単に手に入る情報ばかりでした。必要としている情報はすぐ身近に存在しているのに、そのことに気付けない…これは本当にもったいないと思います。

一つの例を挙げてみたいと思います。

ヨーロッパで就職する場合、CVと呼ばれる履歴書を人事に提出する必要があるのですが、日本の履歴書とは全く異なるフォーマットのため、そもそもどうやって書いたら良いのか分からないという人が少なくありません。こんな時にちょっとした英語力と情報検索リテラシーがあれば、知りたい情報に簡単に辿り着くことができます。

その情報へのアクセスの仕方のサンプルがコレ↓です。

"CV How to write"
情報へのトビラ
CVという単語に対してたった三つの単語"How to write"を付け加えて検索するだけで、目的とする情報に容易に到達することができます。このようなスキルはいったん身に着けてしまえば当たり前のように活用するようになるのですが、それが当たり前になるまではちょっと時間が掛かるかも知れません。

僕の場合、ゆっくりながらも英語を地道に勉強し続けた結果、日本語だけでは得ることの難しい貴重な情報に辿り着けるようになりました。


可能性を掴み獲る力


ブログの内容を考えている時、僕はヒントとなるアイデアを備忘録がわりにTwitterでつぶやくことがあります。今回のブログはまさにそのパターンなのですが、ここで次の僕のTweetを読んで下さい。


実はこのTweetに書いた『自分の力』は『英語力』を意図したものです。これまでのブログでも紹介したように、F1を目指す道程でたくさんの出会いがありました。その中には自分のキャリアを大きく左右した貴重な出会いもあり、英語を学びヨーロッパ圏の文化を知ったからこそ得られた出会いでした。

人との出会いなど将来の可能性に繋がるチャンスは、常に身近なところに存在していると僕は考えています。そのチャンスに気付けるようになるには、いくつかの『力』が必要となりますが、僕にとっての英語は外国人とのコミュニケーションツールとしてだけでなく、チャンスを掴み獲るために絶対に欠かすことのできない重要な力となったのです。

手遅れになる前に…


見えてこないチャンスのために英語学習のモチベーション維持することはとても難しいですし、不安を覚えることもあるでしょう。逆に人によっては『英語は必要な時になったら、その時に必死に勉強すればいいや~』と思って、手つかずのままでいる人もいるかも知れません。

しかし、これだけは覚えておいてください。とても残酷なことにチャンスというものは無限に存在するものではなく絶対的に有限です。そして、時間が経てば経つほどチャンスは失われていくのです。そうならないためにも『見えない可能性はいずれ見えてくるようになる!』と思い込み、将来訪れるであろうチャンスを確実に仕留められるよう、若い頃から準備しておくことを強くオススメします。

…と、ちょっと重い感じで書いてしまいましたが(汗)、英語を学ぶことは目標が何であれ、人生に少なからずプラスをもたらしてくれると思います。皆さんにとっても英語がそんな存在になってくれることを切に願っています。

情熱の炎は絶やしてはならないが…
3回に渡って英語の重要性について書き綴ってきましたが、いかがでしたでしょうか?F1を目指す皆さんにとってこの3回のブログが英語学習のモチベーションに繋がってくれれば幸いです。

次回以降のブログではF1チームへの応募方法やCV(履歴書)、Cover letter(挨拶状)などについて書く予定です。F1への情熱だけを伝えても採用してくれないのがF1チームへの就職というもの。どんなポジションであれF1チームの契約オファーを獲得するには、自分の実力をCVやCover letterでどう伝えるのかがとても重要になります。

それでは次回更新をどうぞお楽しみに!

[つづきはコチラ]

2018年9月20日

F1的な就職活動のススメ【英語の重要性その②】

[前回のブログ]
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英語学習の取り組みについて


今回のブログでは僕が具体的にどのような取り組みで英語力を磨いていったのかを紹介しようと思います。ただし!最初に断っておきますが、世の中には僕よりも英語のできる日本人の方はたくさんいらっしゃいますし、英語教育のプロの方もいるので今回のブログはあくまで"ご参考"ということでお願いします。

英語学習に活用していたDVD
まず始めに僕の考える英語学習の本質課題から書いてみたいと思います。今回もF1とは全く無関係なトピックスですがお付き合いください。

英語の苦手意識はどこからくる?


いきなりですが、次の英語の文章をサッと読んでみて下さい。

"Prime Minister Theresa May wants to keep close ties with the EU in certain areas, such as trade in agricultural products and allowing skilled migrants access to jobs in the UK.

She says her plan will allow Britain to take back control of its laws, money and borders, just like people voted for in the 2016 EU referendum, while also allowing as 'frictionless' trade as possible and avoiding a physical border for Northern Ireland"

(出展:BBC News "At-a-glance: The UK'2 four Brexit options")

(引用元:BBC News公式サイト)
はい、どうでしたか?イギリス首相テレーザ・メイ氏がEUとの関係を今後どのようにしていきたいと考えているのか理解できたでしょうか??恐らく…ですが、『良く分からないし、とりあえず英語は読まずにすっ飛したぞ…』という人も中にはいるかと思います(汗)。

では次の例文はどうでしょうか?

"I play the game with PS4"

和訳は『私はPS4でそのゲームをプレイします』ですね?おそらく、文章の意味を直感的にすぐに理解できた人が多いかと思います。この文章が理解しやすいのは単に文章が短いだけでなく、使われている単語が『ゲーム(game)』、『プレイ(play)』といった日本人に馴染み深い言葉が使われているからだと思いませんか?

つまり、二つ目の例文に使われている英単語のように、単語の意味のイメージがアタマに刷り込まれてさえいれば、容易に意味が理解できるようになるわけです。しかし、この刷り込みができていないとアタマにスッと意味が入ってこないため、脳がストレスを貯めてしまうわけです。このストレスこそが英語への苦手意識を生み出していると僕は考えています。


僕が実際に取り組んだ英語学習


それでは僕がこれまでに取り組んできた英語学習を紹介したいと思います。全てを計画的に生真面目に実行してきたわけではありませんが、のんびりと、慌てずに、急がずに、地味~に、そして時にはサボりつつ取り組んできたことをここに書いておきます(汗)。

英字新聞[読解力トレーニング]

この学習をしていた当時はスマホやタブレットが普及していなかったので、日系英字新聞を定期購読していました。毎日届くわけではなく指定した曜日の新聞が届くサービスだったと思います。さすがに毎日届いても読み切れないので、僕は週一回の配布を選んでいました。

届いた英字新聞はカバンにいつも入れておき、移動時間や休み時間に読んでいました。今となってはスマートフォンで英字新聞サイトがカンタンに閲覧できるので、英語読解力の向上に取り組んでみてはどうでしょうか?最初はなじみやすい日本の時事ニュースを英語で読むのが分かり易くて良いかと思います。

(引用元:Japan times公式サイト)

モータースポーツ好きならイギリスのAutosportもお勧めです。ちょっと英語は難しくなりますがAutosportはゴシップ記事を掲載しないポリシーなので、確かな取材に基づく良質な情報が得られるのでおススメです。

DVD鑑賞・BBC Podcast[聴覚力トレーニング]

もはや英語学習の鉄板と言っても良い学習アイテムですね。僕の場合は比較的理解のしやすいジブリ映画のDVDを英語音声で鑑賞していました。また、ディズニー映画のDVDも英語音声でしか見ません。

DVD鑑賞は取り組みやすい英語学習なので継続的な取り組みをおすすめしたいです。取り組み方の一例として、最初は日本語字幕を活用して英語の音と意味を関連付け、その後に英語字幕にスイッチ、最後は字幕なしで見るようにすると良いかなと思います。

BBC Learning English公式サイト

次にオススメしたいのがイギリス放送協会BBCが提供する英語学習サイト"BBC Learning English"です。そのプログラムの中に"6 minute English"というページがあります。この番組では様々なトピックスを聞き取りやすいイギリス英語で学ぶことができるのでとてもオススメです。他にもたくさんのコンテンツがpodcastとしても配信されているので、ぜひチェックしてみてください。

メールコミュニケーション[表現力トレーニング]

このトレーニングは他と比べてちょっと敷居が高くなります(汗)。なぜならコミュニケーションを取る外国人の相手が必要なためです。いきなり外国人の友達を作るのはちょっと難しいかも分かりませんが、自分の場合は仕事を通じて仲の良くなった友人とメールで近況報告のやり取りをすることで英語を書く機会を作っていました。

また、日産自動車で働いていた頃は海外企業との共同プロジェクトを任せてもらえるよう積極的に上司に働きかけ、英語コミュニケーションの機会を作っていました。英語を使う仕事を積極的に任せてほしいという人は逆に珍しかったので、機会は得やすかったかも?知れません。

出張で訪れたApplus IDIADAのテストコース(公式サイトより引用)

仕事で得られる英語コミュニケーションの機会はメールのやり取りだけでなく、プレゼンテーションのリスニングや海外出張など緊張感を伴うタスクも多いため、英語力向上にとても貢献してくれたように思います。

ところで、10年くらい前に友人へ送ったメールを見直してみたのですが、恥ずかしいくらい稚拙な英語で書かれていてビックリしました(汗)。『いやーそうは書かないよね…?こう書かないと!』といった感じで昔の自分にツッコミを入れてしまいましたが、あれから10年経ち、積み重ねの大切さを改めて痛感した次第です 。

英会話学校[会話力トレーニング]

英語を学習する上で最難関となるのが『英語を話す力』の獲得です。とにかくアタマの中の考えを瞬時に英語にして話し続けなくてはならないのですが、先に書いたように英語の意味のイメージ刷り込みができていないと話すのはかなり難しいと思います。

ともあれ英会話力は話すことでしか伸びませんし、イメージ刷り込みをより深めるためにも僕は英会話学校に毎週通っていました。お小遣いが厳しかったので週一回だけでしたが『いずれこの投資が役に立つ日が来る!』と信じながら英会話を楽しんでいました。

ドライバーとのコミュニケーションももちろん英語
(引用元:フォースインディア公式サイト)

しかし、英会話学校に通う場合どうしても学費(週一回で月額一万円ほど)が必要になってしまいますよね。なので、自分から積極的に英会話の機会を作るのも良いと思います。例えば最近は外国人観光客がとても増えているので、地図を見て困っている人がいれば道案内をしてあげたりするのも良いかも知れません。

昨年の一時帰国中、新宿駅でどのホームに行けば分からずに困っていた外国人がいたので『吉祥寺なら総武線で三鷹行きに乗るといいですよ。中野行きに間違えて乗っちゃうといけないので、ホームまで案内しますね』といった感じで道案内をしてあげたことがあります。結果的に自分が終電を逃してしまいましたが(笑)。

このように、日常生活でも英会話をする機会は昔に比べて増えていますし、友人関係を辿っていけば外国人の友人を作ることも不可能ではないと思います。ぜひ、自分から積極的に英会話の機会を追い求めてみることをオススメします。

僕の考える重要ポイント

4つのカテゴリごとに僕の取り組みを紹介しましたが、いかがだったでしょうか?何か特別なことをしていたわけではなく一般的な勉強方法だったかと思います。最後に、僕の考える英語学習の大切なことを二点ほど書いて、今回のブログを締めたいと思います。

重要ポイントその①

英語に触れる機会を増やす努力をしましょう。待っていても英語を使う機会が増えることはありませんし、とにかく積極的な姿勢を保っていないと日本で英語力を伸ばすのは難しいかなと思います。

重要ポイントその②

どんな英語の学習方法であれ続けること。僕は純粋な日本語話者ですし、今も自分の英語力が十分であるとは思っていません。英語を必要とする限り、ずっと英語学習を続けるつもりでいます。

千里の道も一歩から、ちりも積もれば山となります。一緒に英語学習を頑張っていきませんか??

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2018年9月15日

F1的な就職活動のススメ【英語の重要性その①】

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英語と仕事と


今回のブログのテーマはズバリ『英語』です。このテーマで書き始めてみたところ、どうも一回きりでは書き切れなさそうだったので、複数回に渡って英語をテーマに書いていこうと思います。

さて、先日のport Fさん主催のトークイベントでは参加者の方々から事前に質問を募りましたが、その中には『どうやって英語を勉強しましたか?』という質問がとても多く見られ、英語学習への関心が高いことが分かりました。トークイベントでその質問にお答えすることはできるものの、その答えはより多くの人に伝えた方が良いと考え、ブログテーマとしてお答えすることにしました。

英語リーディングもF1関係ならヤル気が出るかも?
今回のブログでは、僕の学習方法を単に紹介するだけではなく、英語を身に着けたことで何が変わったのか?F1を目指す上でなぜ英語が重要なのか?そのことについても書き触れてみたいと思います。

僕の英語の歴史


最近では幼稚園の頃から子供を英語教室に通わせるなど幼少期からの英語教育が流行っていますが、すでに40歳を過ぎている僕が英語学習を始めたのは中学一年生からです。そう、僕は基礎言語が日本語の純粋な日本人です(汗)。

学生生活で実際に外国人とコミュニケーションした経験はほぼゼロで、英語は学校で学ぶ科目の一つに過ぎませんでした。中学生以降はとにかく受験を切り抜けるために仕方なく勉強していました。数学、物理、化学は好きだったのですが、普段から使い道がほとんどない英語は僕にとって楽しくない&苦手な科目でした。

さらに国語も得意ではなく、大学入試センター試験の国語は最も苦手意識の高いテストでした。例えば、物語文の読解問題では『この時の主人公Aの気持ちとして適切なものを次から選べ。』という設問をよく見かけますが、『いや、俺、主人公Aじゃないし気持なんか分からんし。』…結果、自分の価値観で選んでしまい得点が伸びないという困った高校生でした(汗)。

Oxford University Christ church college
実は大学時代に父親から『1年くらい休学して海外の大学に留学してみたらどう?』と提案されたことがあったのですが、僕はその提案に対して『今はカートレース活動の方が大事だし、留学費用を出してくれるくらいならレース活動の資金として提供してくれる方がありがたいよ!』と返答したのです。

今となっては調子に乗ったこの発言を猛省することしきりですが、内心では『日本語の通用しない世界に踏み出すなんて恐くてできっこない!』と思っていました。もし、かつての自分に会うことができるのであれば『留学もいいぞ~』と間違いなく説得していたと思いますが(笑)。

と、ここまでの僕の英語学習の経緯を知れば、最初から英語達者ではなかったことが分かると思います。決して今も達者と言える程のレベルではないのですが、いわゆる『学校では勉強したけど、英会話とかは全然ダメ!』そういったごく普通の日本人でした。ちなみに初海外は2005年の28歳の時で、当時勤務していた三菱自動車で出張としてイギリスに渡りました。完全に日本語の通じない世界に初めて踏み入った時のあの緊張感は忘れることができません。


英語学習のキッカケ


僕が英語学習を本格的に開始したのは学生時代に就職活動を迎えた時でした。これまた普通のキッカケですね(汗)。しかもご多分に漏れず、まずはTOEICの受験から始めるという王道パターンでした。当時は今ほどTOEICの点数が企業採用として重要視されていなかったため、就職活動のためというよりも純粋に英語力確認のためにTOEICを初受験(確か2002年)したことを記憶しています。

ところで、僕がかつて勤務していた日産自動車は今では新卒入社時にTOEICで700点以上が求められるそうです。ルノーとのアライアンスのためか、これまで以上に業務で英語を使う機会が増えており、要求レベルは年々高まっているようです。

(引用元:国際ビジネスコミュニケーション協会公式サイト)
何はともあれ、就職活動をキッカケに英語学習を本格的に再開することになったのですが、TOEICに対してはあるポリシーを持って取り組んでいました。それは『TOEICのための勉強はしない』ということです。いずれF1の世界で働くために必要なのは、コミュニケーションツールとしての英語力でありTOEICの点数ではないと考えたからです。あくまでTOEICは実力を測るためのモノサシにしか過ぎません。

そんな僕のTOEIC初受験の時のスコアは510点でした。リスニングとリーディングの点数の内訳は覚えていませんが、リスニングの方が少しだけ良かったと記憶しています。この点数レベルで確実に言えるのは、大学生の頃の自分にはイギリスでエンジニアとして働けるだけの英語力は全くなかったということです。そんな僕が今となっては英語をそれなりに使いこなしてF1エンジニアとして働いているわけですから世の中分からないものです。大学生の頃はこんな風になっていることなど想像すらできませんでしたし、そもそもその頃の僕の予定ではホンダでF1の仕事に携わっているはずでした(笑)。

次回のブログでは、TOEICスコア500点台からどのようにして英語力を向上させていったのか?具体的な取り組み方を紹介しようと思います。

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2018年9月5日

F1的な就職活動のススメ【4つの大切な要件】

[前回のブログ]
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僕の考える大切な4つのこと


さて、前回のブログでは『働くこと』に関して僕なりの考えを書き綴りました。今回は『どうしたらF1の世界で働けるようになるのか?』という核心的な部分について書いてみようと思います。自分のこれまでを振り返りそのエッセンスを抽出してみた結果、次の4つの要件に辿り着きました。
  1. 明確な目標を持っている
  2. 目標実現に向けて課題を洗い出すことができる
  3. 課題克服に向けて一歩を踏み出すことができる
  4. 技術への強い探求心を持っている
(引用元:Force India採用ページ)
意外とシンプルな要件のようにも思えますが、今回のブログではそれぞれの要件を掘り下げてみたいと思います。

明確な目標を持ってみよう


F1に限った話ではないのですが、自分の将来を考える上で重要なことは『目標を持つこと』だと僕は思います。F1を目指している人はすでに『F1』という目標があるので、この点で大きく悩むことはないでしょう。ただ、さらに大切なことがあります。それは目標が明確であることです。

F1を目指す上で、目標を明確にすることは意外に難しいのです。なぜなら単にF1と言ってもその仕事内容は多岐に渡りますし、その中から自分が携わってみたい仕事を選ぶ必要があるからです。さらに日本ではF1の世界にどんな仕事があるのか、そもそも知られていないので余計に難しくなっているように思います。

(引用元:Force India採用ページ)
(引用元:Red Bull Racing公式サイト)
ではどうすれば良いのか?F1での仕事を知るベストな手段の一つは、各F1チームの採用情報ページを定期的に確認することです。上に掲載している画像はフォースインディアとレッドブルの公式サイトですが、どのチームの公式サイトにも『Career』または『Jobs』と書かれているページが必ず掲載されています。これが採用情報のページです。

各チームの採用情報ページは不定期ながらも結構な頻度で更新されていますから、全てのF1チームの求人情報を日々チェックするだけで、F1業界での仕事がおおよそ把握できるようになるはずです。

この採用情報ページを常日頃からチェックして、まずは目指すF1の世界がどんなものなのかを学びましょう。そして、ある程度その世界観が把握できたところで自分の携わりたい仕事(目標)を明確にしてみることを強くお勧めします。

課題を洗い出す力を身に着けよう


さあ、目標が明確になったら次のステップに進みましょう。次のステップは目標達成のために何が足りていないのか?自分自身の抱える課題をしっかりと洗い出すことです。ここで例を挙げてみましょう。以下の英文はあるチームの車両運動性能の開発エンジニアの求人に書かれていた人材像です。

"The successful candidate will hold a degree or equivalent qualification in Engineering, Mathematics or Physics. A strong background in vehicle dynamics and/or mathematics with extensive knowledge of vehicle dynamics modelling is essential and knowledge of Matlab, Dymola or Modellica would be beneficial"

[和訳]『応募者は工学、数学または物理学の学位またはそれに相当する能力を有していること。さらに車両運動理論について精通し、車両運動の数理モデル化に関する深い知見を有していること。なお、Matlab、DymolaおよびModelicaに関する知識を有しているとなお良い』

この文面を読めば、この採用では大学や高専などで学ぶ工学、数学および物理などの基礎に加え、車両運動理論やシミュレーションソフトを応用したモデリングのスキル・経験が求められることが分かります。もう一つ例を挙げてみましょう。このポジションは、とあるチームの空力開発エンジニアの求人になります。

"Reporting to the Deputy Head of Aerodynamics; in Parma, Italy. Responsibility to support and develop the operational aspects of the Aerodynamics Department. Areas of influence will include experimental development, computational development, full size components and departmental software development"

[和訳]『(このポジションの)レポートラインは空力開発部の副部長で、職場はイタリアのパルマとなります。職務は空力開発部門のオペレーション面の開発およびそのサポートになります。実験技術、数値解析技術、フルスケール(実寸大)部品の開発、および空力部門で開発しているソフトウェア開発が主な担当領域です。』

このポジションでは多岐に渡った経験とスキルを求められており、深さよりも広さに優先度が置かれた要件という印象を感じます。参考までにこの求人情報に記載されていた主な業務内容を次の画像で紹介します。項目数はちょっと多めですが、英語力向上のため読解はご自身で!

Key Responsibility of the position
このようにF1チームの採用情報ページを読み解いていけば、F1エンジニアとして求めれる要件はかなり理解できると思います。少し話は逸れますが、採用情報ページでは専門用語が英語で書かれており、理解が難しい部分が多々あるかも知れません。しかし!こういう時にこそ英語を学ぶ良いチャンスです。ちゃんと意味を調べ、書かれていることが理解できるように頑張ってみてください。

さあ、求められる要件が理解できたら、あとは自分の能力・経験と照らし合わせて自分に足りていない部分を明らかにするだけです。スキルはあるが経験が不足しているのか?そもそもスキルがないのか?その状況は人それぞれです。過去に自分が取り組んできたことをしっかりと振り返り、自分に足りていないものを把握することに勤めてみると良いです。


最初の一歩を踏み出してみよう


目標も明確にしたし、課題も洗い出した。でも課題を克服するにはどうしたら良いのか?実はこれが一番難しく、そもそも何をしたら良いのか分からない…という人も多いのではないでしょうか。間違った方向に進んでしまうことを恐れるあまり、他の人の取り組み方を気にし過ぎたり、そもそも一歩を踏み出すことを躊躇してしまう人もいると思います。

Go Forward, Esteban!!
(引用元:Force India公式サイト)
ただ、これだけは覚えておいてください。F1の世界のドアを自ら叩き、この世界に入って来た日本人エンジニアやメカニックの方に共通して感じられることがあります。それは『自分自身でどうすべきかをしっかりと考え、それを実行している』ことです。F1に至るまでの道程で躊躇した様子は全く感じられませんし、掲げた目標に対して『自分には出来そうにない』と思っている様子もありませんでした。

先日、こんなことを経験しました。

Milton Keynesにあるレンタルカートのサーキットでは毎年恒例の24時間レースを開催しています。そのレースに参加した時のことです。チームの構成メンバーは全員F1エンジニア。メンバーの所属先F1チームはバラバラでしたが、誰が言うまでもなく『優勝する』というチーム目標を掲げていました。チームリーダーは昨年、一昨年の各参加チームのデータを詳細に渡って分析し、レース戦略を立案していました。お遊びのレースではありましたが全員が『絶対に勝つぞ!』と本気で思っていましたし、その戦略に基づきメンバー全員が『自分は何をすべきか?』を考えて実行していたことがとても印象に残っています。


最初の一歩を踏み出す時、誰もが不安になります。なぜならその一歩が本当に正解なのか分からないからです。しかし、この世界に真の正解なんてどこにもありませんし、そのことを気に病んでも仕方ありません。仮に間違っていたとしたら、どうして間違えたのかを顧みつつ新しい方向へと一歩を踏み出せばよいだけのことです。時には思慮深く、時には無鉄砲に…どんなスタイルでも構いません。小さなことでも良いので、まずは最初の一歩を踏み出すことから始めてみてください。

技術への探求心こそエンジニアの魂


最重要であり絶対に必要な要件と考えているのが、技術への飽くなき探求心です。いや、そもそも探求心を持たずしてエンジニアになるべからず、と言っても過言ではないかも知れません。

F1の舞台裏では日々ライバルチームに勝つために様々な技術が研究・開発されています。空力技術、シャシー技術、パワーユニットの出力・燃費向上技術など、その技術領域は想像を絶するほど広く、かつ深さがあります。その激しい技術競争の中、並大抵の探求心では勝ち上がっていくことはできません。

正直に書くと、僕は自分の中にある探求心を意識的に高める努力をしています。そもそも僕はラクな方向に流れていく癖があるので、それを半ば強制的に修正しています。そうでもして緊張感を維持しておかないと、あっという間にF1の世界の激流に呑み込まれ、平々凡々なF1エンジニアのままで終わってしまうと思っているからです。

Checo and Race Engineer
(引用元:Force India公式サイト)
とても華やかなに見えるF1の世界。しかし、レースに関わる全ての人は熾烈なプレッシャーに晒されつつ自身のすべきことに常に集中しています。そのプレッシャーに打ち勝ち、好結果を得られた時は最高の気分を味わうことができる…それがF1という世界での仕事なのです。

それでは最後に僕のツイートを紹介して、このブログを締めたいと思います。このツイートこそ、僕の今の仕事への想いそのものです。


世界最高峰のレース、F1。この世界の仕事で得られる喜びも世界最高峰です。一緒にこの世界で戦ってみませんか??皆さんの挑戦をお待ちしています。

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2018年8月25日

F1的な就職活動のススメ【はじめに】

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はじめに。


2018年2月より始めた連載ブログ『僕がF1エンジニアになるまで』では、僕がどのようにしてF1へとたどり着いたのか?その軌跡を紹介してきました。F1ファンの皆さんにとってF1の世界を身近に感じるキッカケとして、これからF1を目指す若い人にとっては今後のキャリア形成の参考になれば…とその一心で書き綴っていました。

VJM11(引用元:フォースインディアF1公式サイト)
おかげさまで本当に多くの方々に読んで頂けましたが、F1を真剣に目指す若手の皆さんからすると少し物足りないところがあったようです。2018年夏のport Fさん主催のトークイベントで募った質問の中には『F1の世界で働くには具体的にどうすれば良いのか?』という質問が数多く寄せられており、とても関心が高いことを知りました。

そこで、その関心に(可能な限り…)応えるべく、学生時代の就職活動とF1への転職活動で得た経験を元に『就職活動』をテーマとして複数回に渡ってブログを書いてみたいと思います。そして『どうしたらF1の世界で働けるようになるのか?』その疑問に答えたいと思います。

いちばん大切にしているモノ


そもそもF1エンジニアである前に社会人として、僕が何を考えながら働いているのか?そのことを最初に書きたいと思います。幸いなことに僕は心身ともに健康で何の不安もなく働くことができます。そして、いつもこう思っています。

『仕事を通じて社会に貢献したい』

この考えは社会人としてのスタートを切った三菱自動車に勤める頃に持つようになりました。不祥事の発覚で揺れる中、『なぜ僕はここで働いているのか?』そんなことを自問自答する日々が続いていたからです。

(引用元:レスポンス)
その時に気付いたのです。『自分が健康である限り、どんな仕事、働き方であれ社会に貢献すること。そしてその対価として給料をもらうこと』が働くということなのだなと。自動車メーカーでエンジニアとして働くのであれば、信頼性が高くて安心して乗れるクルマ作ること。これが社会貢献に繋がると思います。気付いてしまえば当たり前のことですが、恥ずかしながら大学生として就職活動をしている時に、僕の頭にこの考えが強く認識されることはほとんどありませんでした。

今でこそ僕はF1エンジニアとして働いていますが、この考えはずっと変わりません。仕事を通じてドライバーに少しでも速いF1マシンを提供すること、レースを通じて世界中のF1ファンにレースを楽しんでもらうこと。これが今の僕がなすべき社会貢献と考えています。


まず考えてもらいたいこと


仕事を通じて目指すものが何であれ、就職活動に取り組むにあたって考えてもらいたいことがあります。それは『どのようにして社会を幸せにしたいのか?』ということです。多くの場合(かくいう自分もそうだったのですが…汗)、就職活動を迎える頃になると自分は何をしたいのか?という自分を中心に置いた考えだけで行動する傾向が見られます。

そうではなく、まずは自分の生きる世界を今まで以上に見渡してみてはどうでしょうか?そして、いろいろな人に会って話をしてみてください。今となってはインターネットには様々な情報がありますし、TwitterやFacebookなどで人の存在を知ることができ、話しかけることも可能な時代です。しかし、そんな時代であっても百聞は一見に如かずだと思います。このブログもまさにインターネット上の情報ですが、僕の知っていることのほとんどはブログに書くことができません(汗)。Twitterも同じです。だからこそ実際に人と会って話をすることはとても重要だと思います。

最終的に自分の生きたい世界への理解が深まってくれば『この仕事を通じて社会に貢献すれば、自分も幸せになれるのではないだろうか…』と感じられるようになるのではないでしょうか。

以上が今回のテーマでブログを書くに当たっての僕の想いです。次回のブログでは『どうしたらF1の世界で働けるようになるのか?』この疑問に対する僕の直球回答を書きたいと思います。もちろん、F1への具体的な就職活動についても今後書いていこうと思いますので、どうぞお楽しみに!

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2018年8月19日

2018年前半を振り返って

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激動の2018年シーズンも半分が終わり、いよいよ来週からはベルギーGPが始まりますね。すでに夏休みも終わる頃になってしまいましたが(汗)、改めて今年の前半を振り返ってみたいと思います。

皆さんもご存知の通り、今年は想定していた以上にたくさんのことが起きました。そんな激動の半年を振り返り、真っ先に出てくる言葉は…

『さすがに疲れた…』

この一言に尽きます(汗)。夏休みに入るまで有給休暇をほとんど取らなかったので体力的な面での疲労もありましたが、精神的な面での疲労感を特に強く感じました。今年に限っては…特にですね。F1という世界にいる以上、波瀾万丈な仕事人生は受け入れざるを得ないようです(汗)。

そんな波瀾万丈な中でもバルセロナテストから徐々に速くなっていくマシンのパフォーマンスには本当に励まされてきましたし、アゼルバイジャンGPでの表彰台獲得やドイツGPでの安定した力強さを目の当たりにすることができました。そのマシンパフォーマンスに少なからず貢献できたことは本当に嬉しかったです。

(引用元:Force India公式サイト)
さて、今回のブログでは成長を実感できたことと今後の課題、そしてあのイベントについて少し書いてみようと思います。



成長できたところ


自分の仕事はバルセロナテストの一か月前から一気に忙しくなります。新しいマシンが出来上がってくると同時にやることが増えるためです。F1エンジニア生活2年目ともなれば開発の流れも理解できているので、常に先手を打ちながら仕事を進めていきました。不測の事態はたいてい起こるものですから(笑)。

そんな中、昨年の成果と経験をフル活用して準備を進めることが出来たので、何とか順調なスタートを切れたかなと思います。昨年は対応できていなかったことが今年はちゃんと対応できるようになっていたこと。この点は自分の成長として実感できたことが良かったです。

さらに、仕事の担当範囲も今年は大きく拡げることができたので、昨年以上に仕事が充実していました。もちろん、成果として周囲が納得するレベルに仕上げる必要があるので、日々プレッシャーを感じてはいましたが、新しいことに挑戦することはいつも楽しいものです。

『あ、これも検証しておくべきか??』

『うーん、ここの比較もしておくべきだな…』

『本当にこれがベスト??』

こういった自問自答をしながら、最適解を突き詰めていくのはエンジニアとして充実感を得られる最高の瞬間でした。しかも開発の対象がF1マシンなのですから充実しないわけがありません。まだまだ仕事の範囲は拡がりを見せることになるのですが、これからの仕事がとにかく楽しみです。



今後の課題


一方で課題も浮き彫りになりました。上にも書いたように先手を打ちながら進めたは良いものの、全ての先手が必要であったかというとそうでもありませんでした。念押しをし過ぎる部分があったことから、スピード感に欠けることがあったこと。これが一つの課題かなと思いました。

量産車開発と異なり驚異的なスピードで進むF1の開発。その流れにタイムリーに対応する必要があるのですが、そんな中である程度の割り切りも必要です。もちろん、適切にその割り切りを判断する必要があるのですが、その勘所をもっと身に着けられるよう仕事の取り組み方をもう少し考える必要がありそうです。

そして、メンタル面での課題もありました。それはレース結果に一喜一憂し過ぎないことでしょうか。モータースポーツに関わる仕事をする以上、レース結果について少なからず感情を持つのは仕方のないことですが、結果が良くなかった時にちょっと落ち込みすぎたかなと思います(汗)。もう少し気楽でいられるメンタリティの方が疲れない気もするので『動かざること山の如し』となりたいものです。

今後も続くであろうF1エンジニア生活、もう少し慣れが必要なようですね(笑)。





新しい取り組みについて


ご存知の通り、夏休み中の8月4日、5日にport Fさん主催でトークイベントを開催させて頂きました。2日間でのべ180名を超えるF1ファンの方々にお越し頂けました。改めて来場頂いた皆さんに御礼申し上げます。本当にありがとうございました!



F1に限らず多くのモータースポーツファンの皆さんにもっとモータースポーツを楽しんでもらいたい、その一心で休日の時間をフルに活用してイベントの準備に取り組んできました。幸いなことに大きなトラブルもなく無事に終えることができ、さらに事後アンケートでは本当にポジティブな回答を頂くことができました。

これからも時間の許す限り、このようなイベントを通じてモータースポーツを盛り上げていこうと思いますので、今後もご支援よろしくお願いします。実は次回のイベントについて夏休み中にミヤケさんと打ち合わせを済ませています。色々とパワーアップした企画アイデアはあるのですが、port Fさんと一緒に少しずつこのイベントを育てていければと思っています。次回イベントの詳細については決まり次第、port Fさんより公表されることになると思いますので、発表をどうぞお楽しみに!





明日から(ありがたいことに…)仕事が再開します。チーム事情が少し変わりましたが、僕自身がやるべきことに変わりはありません。表彰台のテッペン目指してこれからも頑張っていこうと思います。今シーズンに関してはもう一回くらい表彰台を実現したいところですので、後半戦も引き続き応援よろしくお願いします!

[おわり]