2019年2月23日

僕とF1とRCカーと【精神鍛錬とタイヤ】

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立ちはだかったカベとは?


悔しい結果で初レースを終えてしまった僕は、再び練習に励む日々を送っていました。そして『ライバルに負けない速さをもつクルマ』はどうやったら実現できるか?そんなことばかりを考えていました。

この時の僕は日産自動車のエンジニアだったのですが、厚木市森の里青山にあるオフィスでは車両運動性能に関わる制御システムの開発、追浜や陸別のテストコースでは走行実験に勤しむ日々でした。一方、仕事後や週末になるとRCカーの改良メンテナンスや、ドライビングトレーニング。ほぼ毎日が『クルマの運動性能開発』を軸にして生活が回っていたのです。楽しくないワケがありません(笑)。

厚木レジャーランドでの練習風景
こんな日々を送っていれば、必ず成果が出るはず…そう考えていたのですが、この考えを嘲笑うかのようにレースでは結果が伴いませんでした。愛車のTB03も少しずつアップデートを繰り返したことで速さを増しましたし、ホームコースである厚木レジャーランドではいい走りが出来ていました。しかし、レースとなると全く本領が発揮できないのです。

『自分には何かが足りていない…。』

そう強く感じるようになり、改めて自分の課題を振り返ることにしました。

メンタリティの強化


意外に思うかも知れませんが、RCカーでのレースと言えどもメンタリティが結果を大きく左右すると僕は考えています。誤解を恐れずに極端に言えば、それなりに走るクルマと強靭なメンタリティがありさえすれば、ローカルレースで良い結果を出すことはそう難しいことではないと思います。

伝説的な実績を誇る広坂正美氏など世界的なトップドライバーの方々には、想像もつかないような驚異的なメンタリティが備わっていると考えていますが、そのレベルの高さはIFMAR世界選手権のレースを見れば実感することができます。

この決勝レースは5分間のタイムレース(周回数とその周回に要したタイムで順位を決定)で行われていますが、参加しているドライバーたちは驚異的なスピードのRCカーを操りつつ僅差の壮絶なバトルを繰り広げています。


ちなみにタミヤグランプリを例に挙げると予選レースは2分間、決勝レースは3分間のタイムレースで行われるのですが、たったの2~3分間であっても、繊細なコントロールが求められるRCカーをミスなくドライビングし続けることは想像以上に難しいのです。

いつもレースでは緊張して舞い上がってしまい、とにかく本番で結果を出せなかった僕でしたが、RCカーはドライバーとして(人としても?)精神的強さが足りていないことを改めて気付かせてくれたのです。その気付きは遅きに失した感が否めませんが(汗)、このメンタリティの弱さを克服するべく、あることを実践するようになりました。

それは練習と本番のレースでおまじないのような言葉を必ず口ずさむことです。

[練習時]
『これは本番のレースだぞ。集中して行こう!』

[レース本番]
『ここはいつもの厚木レジャランだ。いつもの練習どおり行こう!』

と、つぶやくようにしたのです。大げさなことでもなく、至極単純なことですが…(汗)。

正直なところ、このようなつぶやきがどれほど効果があったかは分かりませんし、メンタリティがタフになった実感はありません。おまけにレース直前に操縦台の後ろでブツブツとつぶやいていたので、他のドライバーに危ない人とも思われていたかも知れません…。

一種の自己暗示?のような取り組みですが、この言葉をつぶやくようになってからは次第にミスも減り、仮にミスしてもそこから崩れることなく持ち直せるようになった……ような気がします(笑)。


タイヤの選定とセットアップ


F1に限らず、タイヤはレーシングカーにとって最重要コンポーネントと言っても過言ではありません。実際のクルマよりも小さいRCカーにおいても同様で、タイヤの選定とセットアップは勝負を決する大きなファクターになります。

とても悩ましかったのは、タイヤ選定に幅のあるレースに参戦する時です。当日の温度や湿度によってタイヤのグリップレベルは変化しますし、タミヤグランプリ関西大会などは仮設サーキットの設置場所が必ずしもいつも同じではなく、タイヤ選定はいつも悩みの種でした。いかにして路面コンディションに最適なタイヤでレースに臨めるか?これが僕にとっては最大の課題でした。特にタミヤグランプリでは練習走行が一回しかないため、複数のタイヤを予選前にチェックすることはほぼ不可能なのです。

タミヤ製ミディアムナロー・タイプCタイヤ
また、日産自動車やF1チームでの仕事とは違い、RCカーでは数多くのセンサーを搭載して車両状態を計測することは基本的にできません。つまり、実験的に評価する以外に車両特性を評価する手段がないのです。しかもその評価はラップタイムとドライバー(僕本人)による主観評価がメインです。エンジニアとしては定量化できないことはとても歯がゆいのですが、『仮説』と『検証』、『帰納』と『演繹』を重ねながら、地道にタイヤの選定基準を自分なりに築き上げていきました。

ここでちょっと余談です。だいぶ昔のことですが、秋葉原にあるRCショップの有名店員さん(当時)Yさんによるタイヤセットアップの記事をRC雑誌で読みました。タイヤインナーの僅かな形状の違いに応じて、挿入時の向きをそろえるのが良いそうです。

その記事を初めて読んだ時は『ええ?!ホントに差が出るの?!』と思いましたが、こういった細かな違いに気付き、工夫することが速さに繋がるということを学ばせてもらいました。

積み重ねた成果は…


2009年にRCカーのレースに参戦するようになり、主にタミヤグランプリ、たまに京商本社でのミニッツレースに参戦し続けた結果、少しずつ成長を実感できるようになってきました。


上の動画は2012年11月に参加したタミグラ関西大会での走行の様子です。予選では波に乗れず、Cメインとなってしまいましたが、決勝では冷静に周囲を見てペースコントロールできるようになっていました。一回大きなミスをしますが(笑)。

この他、タミグラ東京大会でもそれなりの結果を残せるようになっていたのですが、次回のブログ更新(このテーマの最終回!)では、僕がRCカーを通じて学んだこと、嬉しかった想い出をまとめたいと思います。

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