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タイヤスリップ角の定式化
前回のブログでは、コースの壁からの反作用力がミニ四駆に減速をもたらすことを解説しましたが、今回のブログは詳細に現象を理解するため、各タイヤにおけるスリップ角を定式化します。さらに得られた式からミニ四駆のセッティングとの関連性について考察します。
ダッシュ4号キャノンボール (引用元:タミヤ公式サイト) |
車両仕様パラメータの定義
まず初めに、定式化に必要となるパラメータを定義する必要があります。次の図にパラメータをまとめてみました。基本的な諸元は一般的な乗用車とほぼ同一ですが、自転中心は車両重心ではなく、前後ローラー間ホイールベースの中心にあることに注意してください。
図(1)諸元一覧 |
諸元パラメータ一覧 |
- 各タイヤの自転による移動速度ベクトルの定式化
- 各タイヤの公転による移動速度ベクトルとの合成
タイヤの自転による移動速度ベクトル
最初に自転による移動速度ベクトルのみを定式化します。タイヤの接地点には次の図に示すように速度ベクトルが発生しており、自転中心とタイヤ接地点の距離および角速度から速度ベクトルを求めることができます。
図(2)自転運動による各タイヤの速度ベクトル |
図(3)各タイヤの速度ベクトルの分解 |
- FL : Front Left
- FR : Front Right
- RL : Rear Left
- RR : Rear Right
式群(1)各タイヤの自転速度ベクトルのx軸およびy軸の成分 |
式群(2)自転速度ベクトルの大きさと角度の正弦・余弦 |
式群(3)整理後の自転速度ベクトルの大きさ |
図(4)自転ベクトルと公転ベクトルの合成 |
さあ、ようやく自転と公転それぞれの速度ベクトル成分を足し合わせる段階まできました。上述の通り、式群(3)に示されている自転速度ベクトルのx成分に速度Vを足せば次の式群(4)を得ます。
式群(4)公転速度V加算後の速度ベクトルの大きさ |
式群(5)各タイヤのスリップ角 |
ところで、ミニ四駆はコースの壁に沿って走行しているため、式群(5)に含まれる公転速度Vは、公転半径Rと自転の角速度ωの積に等しいという束縛条件を持ちます。この束縛条件を式群(5)に導入すれば、最終的に各タイヤのスリップ角は更にシンプルに次のように表されます。
式群(6)各タイヤのスリップ角(束縛条件適用後) |
まとめ
今回のブログでは、タイヤスリップ角の定式化について取り組んだ結果、次のことが分かりました。
- タイヤスリップ角がホイールベースとトレッド幅に依存する
- タイヤスリップ角は左右間で異なり、その差異はトレッド幅によって決まる
- 束縛条件を適用すると、タイヤスリップ角の速度依存性が消える
- ただし、その束縛条件はコーナー進入・脱出時には適用できない
トレッド幅を大きくした場合、外側タイヤのスリップ角は減少する一方で内側タイヤのスリップ角は増加してしまいます。そこで、車両のロールを誘発するローラーセッティングとすることで内側タイヤの荷重を減らす(もしくは接地させない)ことで、内側タイヤの影響を小さくする…というのがこのセッティングの狙いです。
今回のブログの内容は理論に終始したため少々難しく感じたかも知れませんが(汗)、次の最終回では空力とミニ四駆の運動の関係性について解説したいと思います。次回ブログの更新もどうぞお楽しみに!
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