2019年4月28日

ミニ四駆の運動と制御-第3章-

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タイヤと旋回性能を考える


前回のブログではスリップ角の考え方とタイヤ横力の発生メカニズムについて解説しましたが、今回のブログではそのタイヤ横力がミニ四駆の旋回運動にどのような影響を及ぼしているのかを解説します。

ダッシュ3号シューティングスター
(引用元:タミヤ公式サイト)
最近のミニ四駆の公式大会ではマルーンタイヤと呼ばれる低フリクションのタイヤが選ばれることが多いようですが、なぜ低フリクションのタイヤが好んで使われるようになったのか?その技術的な理由についても今回のブログで明かしていきます。

前後で異なる反作用力


一定速度で旋回走行するミニ四駆には慣性力(見かけ上の力である遠心力)が働いており、その慣性力は反作用力の大きさと等しくなります。ここでは簡単な理解のため、いったんタイヤ横力をゼロと仮定してみましょう。下の図は、このような状況下におけるミニ四駆の力関係を示しています。

慣性力と前後の反作用力の関係
この時、ミニ四駆に働くそれぞれの力には、一般的に次の関係が成り立つことになります。
  • 前後の反作用力の大きさは等しい
  • 前後の反作用力のベクトル和の大きさは、慣性力の大きさに等しい
  • 慣性力の大きさは、旋回半径と速さによってのみ決まる
ここで理解しておきたい重要なことは『タイヤ横力がゼロであれば、前後の反作用力は等しくなる』ことです。もし、このような前後の対称性が常に成立すのであれば、反作用力がミニ四駆の旋回性能に及ぼす影響はなくなるのですが、そうはなりません(汗)。

タイヤ横力の存在がその対称性を打ち崩してしまうのです。では、ここで改めてタイヤ横力を図に追加してみましょう。

前後で向きの異なるタイヤ横力が加わる
上の図に示すように、タイヤ横力はコース外向きの力コース内向きの力、二つのタイプに分けることができます。さらにここでポイントとなるのは、これらタイヤ横力の発生している位置(着力点)です。着力点はフロント側とリヤ側に分かれているため、次のようにしてコースの壁に作用します。

フロントのタイヤ横力
  • フロントローラーをコースの壁へと押し付けるように作用する
リヤのタイヤ横力
  • リヤローラーをコースの壁から遠ざけるように作用する

上記のような作用力が慣性力と一緒にコースの壁に作用するため、コースの壁からの反作用力は、フロント側は大きくなり、リヤ側が小さくなってしまうのです。これをミニ四駆における前後反作用力の非対称性と言います。


非対称性が引き起こすデメリット


では、この非対称性がどんなデメリットを引き起こすのでしょうか?ここで改めて、ミニ四駆の旋回を支配する反作用力に着目してみましょう。

反作用力を分力化する
上の図で注目すべき点は、反作用力が車体横方向に平行ではないということです。このため、図に示すようにフロントの反作用力をミニ四駆の前後方向と横方向に分力した時、その前後方向の分力は減速力になります。これに対して、リヤの反作用力は加速力になります。

この節の最初で仮定したように、もし前後の反作用力が等しいのであれば、上述の減速力と加速力は釣り合うために影響はゼロになります。しかし、ミニ四駆に伝わる反作用力は前後では同じではありませんから、その関係は常に『減速力>加速力』となってしまうのです。

ローフリクションタイヤ(引用元:タミヤ公式サイト)
この傾向はタイヤのグリップ力が高ければ高いほど顕著になり、コーナリングスピードは減少しますが、逆にグリップ力を下げることで減速力は小さくなり、より高いコーナリング速度が実現できます。これが公式大会においてローフリクションタイヤで多く使われる理由です。また、タイヤの接地幅を小さくしてもグリップ力が低減しますので、同様にコーナリング速度の向上が期待できます。

実証実験による効果の確認


ここまでは図と文章で解説しましたが『どうもピンと来ない…』という方も少なくないかと思います。実際に自分自身で実証実験ができればベストなのですが、なんと!実証実験の動画を公開している人気ミニ四駆YouTuber、【Woowa】しろっこさんの動画を発見しましたので、ここで紹介させて頂きたいと思います。



しろっこさんの動画では、セッティングによる性能の変化代を同一の走行条件で切り出しています。このため、とても信頼性の高い実証実験となっているのが特徴です。ぜひ参考にしてみてください。また、本動画の掲載に当たり、しろっこさんより事前承認を頂いております。本ブログへの掲載をご快諾頂き、本当にありがとうございました。

まとめ


以下、今回のまとめとなります。
  • タイヤ横力により前後の反作用力は同じにならない
  • フロント側の反作用力はリヤ側より大きくなる
  • 前後非対称の反作用力により、ミニ四駆には減速力が働く
  • タイヤのグリップ力を減らすとコーナリング速度が向上する
次回以降のブログでは、ちょっと理論寄りのトピックスになりますがミニ四駆のタイヤのスリップ角の定式化を紹介します。次回のブログ更新もどうぞお楽しみに!

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