はじめに。
コロナウイルスによって2020年の生活様式は大きく変わってきましたが、皆さんはどのように暮らしを変えましたか??自宅で過ごす時間が長くなった分、苦労が絶えなかったかと思います。
そんな中、モータースポーツ好き、クルマ好き、さらには多くのプロレーシングドライバーまでもが取り組むようになったアクティビティがあります。そう、ドライビングシミュレータです。
VI-grade Driving Simulator (引用元:VI-grade公式サイト) |
そこで、eレースやSimレーサー、そしてリアルレーサーの凄さをより深く理解することをサポートするため、今回のブログテーマではシミュレータ技術の世界を紹介します。
ところで、シミュレータは英語でSimulatorと綴ります。シュミレータではありませんので、まずは言い間違えにご注意下さい(汗)。
Lando Norris on Simulator (引用元:Lando Norris Official Twitter) |
学生時代の授業の想い出と言えば?
もし、『シミュレータなどの数値解析技術を、誰にでも分かりやすく説明するなら、どう例える?』と聞かれたら、僕は真っ先にパラパラ漫画と答えます。中学生の頃の僕はそれなりにマジメな生徒でしたが、時としてパラパラ漫画を授業中に描きたくなる衝動を抑えきれなかったものです…。その想い出のパラパラ漫画で数値解析を例えます。
どういうことか?それをグラフ図を使って解説します。次のグラフ図を見てください。
連続時間 |
一方、同じ車両姿勢を数値解析の世界のグラフ図で表すと次のようになります。
離散時間 |
このように、ある事象を断続的に表現することを離散化と言います。今回は時刻毎に離散化することを前提としましたが、数値流体解析CFDや有限要素法FEMなどの形状モデルのメッシュ化に適用されるなど、様々な分野で離散化の概念が使われています。
なぜ、離散化が必要なのか?
あなたがPCで何かを計算する時(例えそれがコンビニでのお釣りの計算であったとしても!)、その計算結果を得るには必ず時間経過が伴います。簡単な計算であれば、その結果は瞬く間に画面に表示されるでしょう。
では、PCで車両姿勢を計算する場合はどうでしょうか?この場合、サスペンションの動き、タイヤが発生する力、エンジンを含むパワートレインの挙動、空力特性の変化など計算しなくてはならないことがたくさんあるため、すぐに計算結果は弾き出されません。
Full Vehicle Model (引用元:Claytex公式サイト) |
では、ここで先ほどの離散化のグラフ図をちょっと拡大しつつPCの稼働状況も載せてみることにします。
リアルタイム演算の概念 |
これが離散化が必要となる大きな理由の一つなのです。
まとめ
シミュレータなどの数値技術解析では、離散化によって現実世界をパラパラ漫画のように細切れにせざるを得ないことを解説しました。今後、量子コンピュータ技術などにより演算能力が向上し、細切れの時間間隔は短くなるでしょう。
しかし、どんなに演算能力が向上しようとも計算時間をゼロにすることは現実的ではなく、離散化から逃れることはできません。言い換えれば、連続時間で成り立つ現実世界を数値解析で完全に再現することは不可能だと言えるのです。この事実を数値解析に携わるエンジニアは理解しておく必要があります。
『え?じゃ、なんで現実の完全再現が不可能な技術を活用するのさ?』
このような疑問を持った人もいるでしょう。次回のブログでは『モデリングの考え方とその手法』というテーマでその疑問にお答えしたいと思います。次回更新もどうぞお楽しみに!
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