2018年9月5日

F1的な就職活動のススメ【4つの大切な要件】

[前回のブログ]
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さて、前回のブログでは『働くこと』に関して僕なりの考えを書き綴りました。今回は『どうしたらF1の世界で働けるようになるのか?』という核心的な部分について書いてみようと思います。自分のこれまでを振り返りそのエッセンスを抽出してみた結果、次の4つの要件に辿り着きました。

  1. 明確な目標を持っている
  2. 目標実現に向けて課題を洗い出すことができる
  3. 課題克服に向けて一歩を踏み出すことができる
  4. 技術への強い探求心を持っている

(引用元:Force India採用ページ)
意外とシンプルな要件のようにも思えますが、今回のブログではそれぞれの要件についてもっと掘り下げてみたいと思います。





①明確な目標を持っている

F1に限った話ではないのですが、自分の将来を考える上で重要なことは『目標を持つこと』だと僕は思います。F1を目指している人はすでに『F1』という目標があるので、この点で大きく悩むことはないでしょう。ただ、さらに大切なことがあります。それは目標が明確であることです。

実はF1を目指す上で、目標を明確にすることは意外に難しいのです。なぜなら単にF1と言ってもその仕事内容は多岐に渡りますし、その中から自分が携わってみたい仕事を選ぶ必要があるからです。さらに日本ではF1の世界にどんな仕事があるのかが、そもそも知られていないので余計に難しくなっているように思います。

(引用元:Force India採用ページ)
(引用元:Red Bull Racing公式サイト)

ではどうすれば良いのか?F1での仕事を知るベストな手段の一つは、各F1チームの採用情報ページを定期的に確認することです。上に掲載している画像はフォースインディアとレッドブルの公式サイトですが、どのチームの公式サイトにも『Career』または『Jobs』と書かれているページが必ず掲載されています。これが採用情報のページです。

採用情報ページは不定期ながらも結構な頻度で更新されているので、全てのF1チームの求人情報を日々チェックするだけで、F1業界で求められている人材像がおおよそ把握できるようになります。

この採用情報ページを常日頃からチェックして、まずは目指すF1の世界がどんなものなのかを学びましょう。そして、ある程度その世界観が把握できたところで自分の携わりたい仕事(目標)を明確にしてみることを強くお勧めします。




②目標実現に向けて課題を洗い出すことができる

さあ、目標が明確になったら次のステップに進みましょう。次のステップは目標達成のために何が足りていないのか?自分自身の抱える課題をしっかりと洗い出すことです。ここで例を挙げてみましょう。以下の英文はあるチームの車両運動性能の開発エンジニアの求人に書かれていた人材像です。

"The successful candidate will hold a degree or equivalent qualification in Engineering, Mathematics or Physics. A strong background in vehicle dynamics and/or mathematics with extensive knowledge of vehicle dynamics modelling is essential and knowledge of Matlab, Dymola or Modellica would be beneficial"

(和訳)『応募者は工学、数学または物理学の学位またはそれに相当する能力を有していること。さらに車両運動理論について精通し、車両運動の数理モデル化に関する深い知見を有していること。なお、Matlab、DymolaおよびModelicaに関する知識を有しているとなお良い』

この文面を読めば、この採用では大学や高専などで学ぶ工学、数学および物理などの基礎に加え、車両運動理論やシミュレーションソフトを応用したモデリングのスキル・経験が求められています。

もう一つ例を挙げてみましょう。このポジションは空力開発エンジニアの求人になります。

"Reporting to the Deputy Head of Aerodynamics; in Parma, Italy. Responsibility to support and develop the operational aspects of the Aerodynamics Department. Areas of influence will include experimental development, computational development, full size components and departmental software development"

(和訳)『(このポジションの)レポートラインは空力開発部の副部長で、職場はイタリアのパルマになります。職務は空力開発部門のオペレーション面の開発およびそのサポートになります。実験技術、数値解析技術、フルスケール(実寸大)部品の開発、および空力部門で開発しているソフトウェア開発が主な担当領域』

このポジションでは多岐に渡った経験とスキルを求められており、深さよりも広さに優先度が置かれた要件という印象を感じます。参考までにこの求人情報に記載されていた主な業務内容を次の画像で紹介します。項目数はちょっと多めですが、英語力向上のため読解はご自身で!


Key Responsibility of the position

このようにF1チームの採用情報ページを読み解いていけば、F1エンジニアとして求めれる要件はかなり理解できると思います。少し話は逸れますが、採用情報ページでは専門用語が英語で書かれており、理解が難しい部分が多々あるかも知れません。しかし!こういう時にこそ英語を学ぶ良いチャンスです。ちゃんと意味を調べ、書かれていることが理解できるように頑張ってみてください。

さあ、求められる要件が理解できたら、あとは自分の能力・経験と照らし合わせて自分に足りていない部分を明らかにするだけです。スキルはあるが経験が不足しているのか?そもそもスキルがないのか?その状況は人それぞれです。過去に自分が取り組んできたことをしっかりと振り返り、自分に足りていないものを把握することに勤めてみると良いです。






③課題克服に向けて一歩を踏み出すことができる

目標も明確にしたし、課題も洗い出した。でも課題を克服するにはどうしたら良いのか?実はこれが一番難しく、そもそも何をしたら良いのか分からない…という人も多いのではないでしょうか。間違った方向に進んでしまうことを恐れるあまり、他の人の取り組み方を気にし過ぎたり、そもそも一歩を踏み出すことを躊躇してしまう人もいると思います。

Go Forward, Esteban!!
(引用元:Force India公式サイト)

ただ、これだけは覚えておいてください。F1の世界のドアを自ら叩き、この世界に入って来た日本人エンジニアやメカニックの方に共通して感じられることがあります。それは『自分自身でどうすべきかをしっかりと考え、それを実行している』ことです。F1に至るまでの道程で躊躇した様子は全く感じられませんし、掲げた目標に対して『自分には出来そうにない』と思っている様子もありませんでした。

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今年、こんなことを経験しました。

Milton Keynesのあるカートサーキットでは毎年恒例の24時間レースを開催しています。そのレースに参加した時のことです。チームの構成メンバーは全員F1エンジニア。メンバーの所属先F1チームはバラバラでしたが、誰が言うまでもなく『優勝する』というチーム目標を掲げていました。

Daytona Milton Keynes 24Hours
(引用元:Daytona Milton Keynes公式YouTube)

チームリーダーは昨年、一昨年の各参加チームのデータを詳細に渡って分析し、レース戦略を立案していました。お遊びのレースではありましたが全員が『絶対に勝つぞ!』と本気で思っていましたし、その戦略に基づきメンバー全員が『自分は何をすべきか?』を考えて実行していたことがとても印象に残っています。

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最初の一歩を踏み出す時、誰もが不安になります。なぜならその一歩が本当に正解なのか分からないからです。しかし、この世界に真の正解なんてどこにもありませんし、そのことを気に病んでも仕方ありません。

仮に間違っていたとしたら、どうして間違えたのかを顧みつつ新しい方向へと一歩を踏み出せばよいだけのことです。時には思慮深く、時には無鉄砲に…どんなスタイルでも構いません。小さなことでも良いので、まずは最初の一歩を踏み出すことから始めてみてください。




④技術への強い探求心を持っている


最重要であり絶対に必要な要件と考えているのが、技術への飽くなき探求心です。いや、そもそも探求心を持たずしてエンジニアになるべからず、と言っても過言ではないかも知れません。

F1の舞台裏では日々ライバルチームに勝つために様々な技術が研究・開発されています。空力技術、シャシー技術、パワーユニットの出力・燃費向上技術など、その技術領域は想像を絶するほど広く、かつ深さがあります。その激しい技術競争の中、並大抵の探求心では勝ち上がっていくことはできません。

正直に書くと、僕は自分の中にある探求心を意識的に高める努力をしています。そもそも僕はラクな方向に流れていく癖があるので、それを半ば強制的に修正しています。そうでもして緊張感を維持しておかないと、あっという間にF1の世界の激流に呑み込まれ、平々凡々なF1エンジニアのままで終わってしまうと思っているからです。

Checo and Race Engineer
(引用元:Force India公式サイト)

とても華やかなに見えるF1の世界。しかし、レースに関わる全ての人は熾烈なプレッシャーに晒されつつ自身のすべきことに常に集中しています。そのプレッシャーに打ち勝ち、好結果を得られた時は最高の気分を味わうことができる…それがF1という世界での仕事なのです。

それでは最後に僕のツイートを紹介して、このブログを締めたいと思います。このツイートこそ、僕の今の仕事への想いそのものです。


世界最高峰のレース、F1。この世界の仕事で得られる喜びも世界最高峰です。一緒にこの世界で戦ってみませんか??皆さんの挑戦をお待ちしています。

[つづきはコチラ]


2 件のコメント:

  1. いつも、ためになる話ありがとうございます。
    以前にも、投稿させていただきました。
    最近の我が息子の事を少々書かせていただきます。
    以前にもお話しした各チームへの手紙の結果が少々出てきております。
    今のところ、2チームよりお返事を頂きました。
    ウィリアムズとトロロッソです。
    親から見た目は、ウィリアムズはお世辞的返事でした。
    トロロッソは、ガスリー選手とハートレー選手の直筆サインのカードが送られてきました。
    本人は俄然やる気になってきております。
    このまま、進んで行って大丈夫でしょうか?
    少々心配もありますが、頑張る姿が誇らしくもあります。
    何か、親バカ的コメントとなっていますがお許し下さい。

    https://twitter.com/YoutaKawauchi/status/1041993451787542529

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    1. コメントへの返信が遅くなり申し訳ありませんでした。

      今はF1ファンという立場でF1を楽しむことがまずは大切だと思います。夢を育む時間は本当に大切ですし、その時間が充実すればするほど、その後の努力のモチベーションに繋がると思います。

      今後のブログでも紹介するつもりでいますが、F1チームに加入するに当たり、どんな作法(応募の仕方など)があるのかも紹介していきますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。

      また、上記の作法以外だけでなく、卓越した実力と十分な英語の能力が求められます。ご子息には日頃の学校の勉強がとても大切だということをアドバイスしてあげると良いかと思います。メカニック、エンジニアなど、何を目指すかに関わらず日頃から学ぶ姿勢が大切だと僕は考えています。

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