2019年12月8日

車載用通信ネットワークの"開国"-第1章-

[重要なお知らせ(Important notification)]

はじめに。


近年、“IoT (Internet of Things)”という言葉は、IT業界ではもちろん一般の人でも多くの人が知るほど市民権を得た言葉になりました。私たちの身の回りのモノがネットワークに繋がり、今の生活をより便利に、そしてこれまでに不可能であったことが可能になる時代が到来しつつあります。

自動車業界にもIoTの波は押し寄せてきており、コネクテッド・カーと呼ばれるクルマが開発され、各自動車メーカーはIoT化による新たな価値の創出に力を入れ始めています。

日産IDS コンセプト(引用元:日産自動車公式HP)
コネクテッド・カーは、簡単に言うと『インターネットとのインターフェースを持ち、何らかの情報を外部とやり取りする機能を持つクルマ』です。インターネット普及の歴史とクルマ開発の歴史を良く知る人からすれば、『クルマとインターネットを繋げるくらい、もっと昔からあっても良かったのでは?』と考えるかも知れません。実はコネクテッド・カーの登場が遅れた背景には”車載用通信ネットワークの鎖国”があり、その鎖国こそがIoT化の最大の障害となっているのです。

今回のコラムでは、車載用通信ネットワークの技術を紹介しつつ、鎖国化に至った背景とそのネットワーク解放によるメリット・デメリットを解説します。

車載用通信ネットワークCANとは?


CANとはController Area Networkの略で、1986年にドイツのBOSCH社が提唱した車載用電子システムの相互通信プロトコルのことです。現在販売されている自動車には数多くの電子システムが搭載されていますが、各電子システムが持つセンサー情報や演算結果を効率的に共有するためにCANは開発されました。

現在では、カーオーディオ、ナビゲーションシステムに始まり、インテリジェントクルーズコントロール、先進ドライバー運転支援システム(ADAS)など、様々な電子システムがCANによりネットワーク化されています。

CAN(引用元:メンター・グラフィックス・ジャパン株式会社公式HP)
CANの最大のメリットは、CANコントローラICを各電子システムに搭載し、2本の導線でシステムを結合しさえすれば、低コストで簡単にネットワークを構築できることです。このような簡便性を背景に、現在ではシマノ製自転車のギヤシフトシステムにも採用されるなど、自動車産業以外にも広く普及しました。また、個人レベルでもCANネットワークを活用した電子工作例もたくさん見られます。

このように、CANはそもそもの目的であった『車載用』という枠組みを超えたネットワークプロトコルとして様々な範囲で市民権を得たのです。


どのように活用しているのか?


参考としてインテリジェントクルーズコントロールシステム(ICC)を例に、CANがどのように活用されているのかを紹介します。ここではICCが、『ICC統合制御ユニット』、『エンジン制御ユニット』、『ブレーキ制御ユニット』によって構成されているとします。

各ユニットには複数のセンサーが搭載されており、クルーズコントロールで代表的なセンサーと言えば、前走車との距離を計測するレーダーセンサーなどがあります。エンジン制御ではエンジン回転数やアクセル開度、ブレーキ制御では各タイヤの回転数やブレーキの操作量などがセンサーにより計測され、CAN上で各電子システムと共有されています。

(引用元:日産自動車公式HP)
ICC統合制御ユニットはCAN上で共有されている情報から、最適な車両速度、車間距離などを計算し、それを実現するのに必要なエンジン出力やブレーキ動作量を計算します。そして再びCANを経由して、計算結果を指令値としてエンジン制御ユニットおよびブレーキ制御ユニットに送信します。

このように、従来は単独で動作していた制御システムの連携が可能となり、新たな機能を創出することが可能になりました。クルマの中だけの世界で言えば、実はすでに”コネクテッド”な関係がCANを中心として構築されていたのです。

CANの課題は何か?


電子システム間の効率的な連携が実現可能というメリットを享受できる一方で、課題がない訳ではありません。その課題とは、CAN信号へのアクセスを一切認めない『鎖国』という自動車メーカーの対応です。つまり、CAN上でどのような信号情報が供給されているのか?その情報のほぼ全てが秘匿化されているのです。

なぜこのような対応がなされているのか?また、今後、CANのような車載ネットワークが開国される可能性はあるのか?次回のブログではその核心に迫ります。

[つづきはコチラ]

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