2019年12月12日

X-By-Wire(エックスバイワイヤ)技術が拡げる自動運転技術の可能性②

[前回のブログ]
[重要なお知らせ(Important notification)]


自動運転とX-By-Wire技術の関係


前回のブログで解説したように、自動車におけるX-By-Wire技術では、ドライバーの運転操作を信号に置き換えて自動車を走行させることを目的としています。しかし、航空機と異なり、ドライバーの操作力でも自動車の運転操作は可能であるにも関わらず、導入に至ったのはなぜでしょうか?

その理由は、ドライバーの運転操作が必ずしも正しいとは限らないことにあります。例えば、ドライバーが不適切なアクセル操作を操作すれば燃費の悪化に繋がりますし、ドライバーの意図通りの加速が得られないこともあるでしょう。

ダイレクトアダプティブステアリング(引用元:日産自動車公式HP)
しかし、X-By-Wire技術を応用すればドライバーの運転操作の情報に基づき、最も適切な運転操作を算出して修正することが可能となります。現在ではドライバーの運転操作には何らかの修正が加えられることは、もはや当たり前となっています。

このように、ドライバーの運転動作は何らかの形で電子制御による介入を受けていますが、エンジンスロットル、ブレーキ、ステアリングそれぞれの電子制御への介入の割合が100%となること、これがまさに自動運転です。つまり、X-By-Wire技術そのものが自動運転の土台になっているのです。

現在、全ての運転操作にX-By-Wire技術の適用が実用化されていることから、もはや自動運転の実現は時間の問題と言っても良いかも知れません。

それでもなぜ、自動運転技術の実現が難しいのか?


X-By-Wire技術はドライバー操作への介入が可能です。しかし、その介入は安全性を考慮した上で限られた条件下でのみ、作動されるように設計されています。この限られた条件を外すことが自動運転を実現することを意味しますが、この地球上に存在するすべてのドライバー、すべての道路、すべての環境条件においてドライバーの安全を担保して初めて自動運転が実現したと言えます。

しかしながら、すべての走行条件を考慮することは不可能と言っても良いかも知れません。走行条件の数は天文学的な数にのぼり、自動運転ロジックはその全てに対応できなくてはならないからです。しかし、だからと言って自動運転の実現が不可能かと言うとそうでもありません。実は不確定な条件を一つ除外すれば短時間での実現は十分に可能です。


その不確定な条件とは「人による運転操作」です。全ての運転操作を電子制御の判断に置き換えれば、不確定な条件を確実に取り除くことができます。

ドライバーの体調、気分、性格は運転操作に大きな影響を与える一方、電子制御システムは常に同じ判断を短時間で正確に下すことが可能です。技術的な観点で極論を言えば、この世に存在する全てのクルマにおいてドライバーの運転動作への関与を除外する(つまりドライバーレスにする)ことで技術的なハードルは各段に下がります。

自動運転開発ロードマップ(引用元:日産自動車公式HP)
もちろん、ドライバーレスをいきなり実現できるほど簡単ではないのが自動運転の技術開発であり、10年単位での時間が必要でしょう。ドライバーレスに関しては賛否両論ありますが、この圧倒的に困難な技術開発に対して有効な技術的パラダイムシフトの誕生に期待しつつ、自動運転の技術開発の進化には今後も目が離せません。

まとめ


自動運転を実現するには、X-By-Wire技術の動作シーンの圧倒的な拡大が必要であり、その拡大には困難を伴うことは明らかです。

自動車メーカー、IT企業それぞれ単独での開発ではユーザーにとって真に価値のある完全自動運転(Level 4)の実現は困難ですので、双方の強みと技術アセットを、会社の枠組みを超えて融合させていくことこそが、自動運転の実現のキーポイントになるのではないかと思います。また、その流れはすでにAlphabet(Google)が子会社化したWaymoの動向にも顕著に現れています。今後、IT企業、自動車メーカーがどのようにコラボレーションし、自動運転技術で抜きんでてくるのか?その動向にも注目です。

[おわり]