はじめに。
F1には大きな魅力がたくさんありますが、その魅力の一つに最高速度が挙げられます。その数値は時速350kmを超え、加減速や旋回速度などトータルで考慮すると、地上を走る乗り物としては最速と言っても過言ではないと思います。
画像引用元:F1公式サイト |
まずは比較してみよう。
何か物事を理解しようとするとき、効率の良いやり方の一つは『身近なものと比べてみる』ことでしょう。ここでは二つの身近なモノとF1を比較してみることにします。
自然現象との比較『台風』
僕がF1の凄さを説明する時によく引き合いに出すのが台風です。最近は非常に強い台風が日本を直撃するようになりましたが、2019年に関東地方を直撃した台風21号の最大風速は秒速50mです。これを時速に換算すると時速180kmになります。
引用元:NASA公式サイト |
つまり、非常に強い台風だとしてもF1の最高速度のおよそ半分の風速しかないのです。しかもF1のラップ平均時速は230km/hほどなので、F1マシンとドライバーは台風をはるかに凌ぐ風圧を受けながら走っていることになります。
そして、その速さを生かし、想像を絶するほどのダウンフォースをF1マシンは生み出しているのです。
他の乗り物との比較『新幹線』
地上を走る乗り物で身近な存在と言えば新幹線です。その最高速度は東北新幹線の時速360kmで、F1とほぼ互角と言えます。しかし、F1は直線だけではなく旋回性能が圧倒的に高いことも特徴の一つです。
鈴鹿サーキットの名物コーナーの一つに130Rというコーナーがありますが、この130Rはコーナーの半径が130mであることを意味しています。この130RをF1マシンは時速300kmを超えるスピードで駆け抜けるのですが、新幹線はこのような旋回半径をF1と同じような速度では走れません。
新幹線の場合、400~2000Rほどの半径でも速度を落とさざるを得ないようです。
もちろん、新幹線の用途と重量を考えれば、F1との直接比較そのものに大きな意味はありませんが、少なくともF1が凄まじい風圧の中で強烈な旋回性能を発揮していると言えます。
最高速度は重要か?
さぁ、いよいよ今回のブログテーマの核心に迫ります。F1関係のメディアやテレビ中継では、レース中や予選中の最高速度が紹介されています。次の表は2018年の日本GPでの最高速度をまとめたものです。速度の計測ポイントは130Rの先です。
2018年 日本GP予選トップスピードランキング |
しかし、それだけでは最高速度の重要性を正確に論じたとは言えません。次節でグラフを使ってもう少し詳しく説明してみることにします。
ポイントはコーナーからの立ち上がり速度
ここでちょっとした想像をしてみましょう。F1マシンが鈴鹿サーキットのシケイン、そして最終右コーナーを駆け抜け、ストレートで加速していく様子をイメージしてください。 そして次のグラフを見てください。
車速の時間変化 |
このグラフを見れば、セッティングBで最高速を高めても、7.2秒間もの間、セッティングAに対して遅い速度でガマンしなくてはなりません。こうなると、速度で追いつく前にストレートで距離の差をつけられてしまうのです。
コーナーの最低速度をとにかく高めること重要 |
そうだとしても!(まとめ)
『なるほど、最高速度を多少は犠牲にしてもいいから、コーナーを速く走れるようになればいいわけね。簡単な話じゃん?』そう思った人もいるかも知れません。しかし、妥協することなく速さを徹底的に追及するのがF1です。
『コーナーも速くして、最高速度も高めたい。』
二律背反する性能を実現するためにはどうしたら良いのか?それを実現するために各チームはマシンに様々な工夫を凝らしています。果たしてどんな工夫がなされているのか…残念ながらこれ以上のことは書けませんが、一つだけ言えることがあります。
『幾多の革新的な技術アイデアがF1マシンには盛り込まれている。』
ということです。妥協を許さず、至高の技術を実現すること。これがF1における技術スポーツなのです。
[おわり]