2019年11月16日

F1新規参入はなぜ難しいのか?ー第1章ー

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はじめに。


F1の歴史を振り返ると、長きに渡って繁栄を続けるチームが活躍する一方、様々なチームが誕生しては消え去っていく…そんな少し悲しい側面を見ることができます。直近10年分のF1の歴史を振り返れば、2010年にTeam Lotus、Virgin Racing、Hispania Racing F1 Team、2016年にはHAAS F1 Teamが新規参入してきましたが、2010年デビューの3チームは全て消滅してしまいました。

By Morio - Own work, CC BY-SA 4.0
これら2010年組の3チームがなぜ、破滅へと導かれてしまったのか?

その要因は一つではなく、様々に絡まり合った複数の要因があることは想像に難くありません。しかし、そもそもF1チームとして本質的な要因が欠けていたのではないか?と僕は考えています。今回のブログテーマでは、F1および自動車メーカーにおける技術文化を論説の軸に置きつつ、僕の考えを書き下ろしてみたいと思います。

2010年の新規参入チーム


まずは2010年に参入してきたチームを紹介したいと思いますが、Wikipediaの内容を転載しても意味がないので(汗)、実際にそのチームで働いた経験を持つ同僚から聞いた話を交えながら紹介したいと思います。

Hispania Racing F1 Team


元々は下位カテゴリで活躍していたカンポスレーシングがチームの起源で、マドリードを拠点に発足した初のスペイン系F1チームです。スペイン系F1チームが発足するに至ったその背景にはフェルナンド・アロンソ選手の影響があります。

By Andrew Griffith from United Kingdom - Bahrain Formula One, CC BY 2.0
アロンソ選手がF1に登場する以前、スペインでのF1人気はそれほど高いものではなかったそうです。しかし、アロンソ選手が著しい活躍をするようになるとスペインでのF1人気が爆発します。その影響はスペイン人エンジニアの就職事情にも影響を与えた程で、多くの若手エンジニアがF1を目指すようになり、現在は多くのスペイン人F1エンジニアがF1業界で活躍するようになりました。

このチームは、イタリアの名門レーシングカーコンストラクターであるダラーラに車体開発を委託していましたが、本来モータースポーツ産業が盛んではないスペインに拠点を置いていたこともあり、人材や活動資本の確保にチーム発足当時から苦戦していたようです。また、経営メンバーの入れ替えに伴いチーム名称を変更するなど、いくつかの悪影響をチーム消滅までずっと引きずってしまったF1チームでした。


Virgin Racing


2010年に新規参入したチームとしては、最も存続期間の長かったのがVirgin Racingです。このチームの特徴の一つにWirth Research社とのコラボレーションが挙げられますが、全ての空力性能開発をCFDで実施するという野心的な試みは有名な話です。名称はVirgin Racingから始まり、いくつかの名称を経てManor Racingへと変遷を遂げ、2016年の最終戦アブダビGPを最後に消滅します。

By Morio - Own work, CC BY-SA 3.0
このチームの拠点はずっとイギリスにありましたが、運営拠点(ヨーク州ディニントン)と開発・製造拠点(オックスフォード州バンブリー)が離れた別の場所にあったため、効率的な活動形態ではなかったようです。2010年に参入したF1チームとしては唯一ポイント獲得の実績があっただけに、活動予算さえ確保できればF1に定着できる可能性があっただけに消滅はとても残念でした。

Manor Racingとなって以来、活動拠点はバンブリーにあるファクトリー(現在はHAAS F1 Teamがイギリス国内拠点として使用)に集約されましたが、チームの規模としては最も小さかったようです。このチームには日本人のエンジニア2名とメカニックが1名所属していましたが、チームの末期には活動予算が限られており、F1チームとは思えないほどの厳しい環境での活動を強いられていたそうです。

Team Lotus


マレーシア人実業家のトニー・フェルナンデス氏によって創設されたのがTeam Lotusです。当時、Lotus F1 TeamもF1に存在しており、Lotusという名称の使用権を巡る係争がありました。その後、フェルナンデス氏は保有するCaterhamの名称使用権を使い、Caterham F1 Teamへとチーム名称を変更します。

By Morio - Own work, CC BY-SA 3.0
残念ながらポイントを獲得することなくチームは消滅してしまいますが、他の2チームと大きく異なるのは、トニー・フェルナンデス氏がCaterham Groupとして、自動車・航空産業にCaterhamのブランドでビジネスを展開していたことでした。Caterham GroupにはF1チームの他、自動車技術のコンサルティング会社であるCaterham Technology、カーボンコンポジット事業を手掛けるCaterham Composites、そして名車Caterham 7で有名なCaterham Carsも含まれていました。

しかし、トニー・フェルナンデス氏は自動車産業でのビジネスの難しさを痛感したのか、Caterham Groupのビジネスとしての可能性に見切りをつけ、事業撤退を決断します。その結果、2014年を最後にCaterham F1 TeamはF1を撤退、Caterham Groupは解体されてしまいました。現在はCaterham Carsのみが存続しており、Composite事業も売却されたようです。

現在、F1業界ではMcLarenやWilliamsがこのようなグループ企業の形態を採用しており、株式も上場するなど、一定の成功を収めていますが、残念ながらCaterham Groupに限って言えば、そうはなりませんでした。

課題は何であったのか?


このブログの冒頭でも書いたように、これらのチームが破滅へと導かれた要因はいくつもありますし、その全てを断定することはできません。しかし、一人のエンジニアとして、自動車メーカーで働き、そしてF1チームで働いた結果、見えてきた一つの本質的な課題があります。

それは『技術資産の欠落』です。

そもそも技術を基幹とした企業が成功を収めるには、それ相応の技術力の高さが求められるのは当然のことであり、瞬間的な技術力の高さだけでなく、過去からの積み重ねも必要です。次回のブログでは、消滅してしまったCaterham F1 Teamの内情を例に、技術資産とF1撤退の関連性について解説します。次回更新もどうぞお楽しみに。

[つづきはコチラ]

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