2019年11月17日

F1新規参入はなぜ難しいのか?ー第2章ー

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F1界の諸行無常


前回のブログでは技術の積み重ね、つまり技術資産の重要性について説明しました。なぜ、2010年にF1チームに参入したF1チームは技術資産が構築できなかったのか?そして、技術資産の欠落とF1撤退にはどのような関連性があるのでしょうか?

Caterham Technology社のReceptionにて筆者撮影
今回のブログでは現代のF1チームの特徴に言及しつつ、2014年の最終戦を最後にF1から姿を消したCaterham F1 Teamを題材にF1新規参入の難しさについて解説します。

現代のF1チームの特徴とは?


彩鮮やかなチームユニフォームを着たピットクルー。ピットウォールではインカムを装着したレースエンジニアがドライバーと交信し、様々な指示を出す。ドライバーはサーキットの上で激しいバトルを展開する。

引用元:Racing Point F1公式サイト
多くのF1ファンが思い浮かべるF1の世界のイメージはこんな感じではないでしょうか?このイメージはもちろん正しいのですが、実は表舞台で見られるF1チームはそのチームの全体からすればせいぜい10%ほどでしかないのです。ここで、現代のF1チームの特徴を端的かつ的確に表現するならば、次のような表現が相応しいと僕は考えています。

『レース部門が付帯した自動車メーカー』

つまり、F1チームの根幹は自動車メーカーそのものであり、レース部門はその一部でしかないということです。F1チームで実際に働いてみると、僕がかつて勤務していた日産自動車でやっていたことと本質的には変わらず、たまにF1チームであることを忘れてしまうことがあるくらいです。これが、僕がF1で働いて実際に得られた実感です。


F1チームと技術資産


もし、あなたが十分な資本金を持つオーナーとしてゼロからF1チームを創設することを考えた時、何を最初に準備すれば良いでしょうか?

その答えは『ヒトを集める』ことです。Caterham F1 Teamもまずはそこから始まりました。技術マネジメントとしてF1での経験が長いマーク・スミス氏やジョン・アイリ―氏を招き入れ、エンジニアやスタッフを他チームからヘッドハンティングし、開発体制を整備していきました。

『F1経験者を集めれば、チームとしてすぐに機能するだろう。』

Caterham F1 Teamのオーナーであったトニー・フェルナンデス氏はそんな風に考えていたかも知れません。しかし、一つだけ落とし穴がありました。それは、F1経験者を集めればF1チームとしては機能するが、高性能なF1マシンを作る能力が伴うかどうかは別問題だということです。

By Marc Evans from Newbury, UK - Toyota-Batman, CC BY-SA 2.0
かつて、日本の自動車メーカーもドイツに拠点を置きF1に参戦しました。設備も人材も最高レベルを擁していたものの、彼らが優勝を狙えるトップレベルに登り詰めるまでには7年もの歳月が掛かり、F1で成功することの難しさを痛感したのではないでしょうか。なぜ、難しかったのか?その理由は彼ら自身の歴史を振り返ればすぐに理解できるはずです。

すなわち、ローマは一日にして成らず、長きに渡る自動車開発の歴史こそが世界を代表する自動車メーカーを作り上げたのであり、同じく自動車メーカーであるF1チームも技術資産を積み重ねることが真に大切なのです。

Caterham F1 Teamの実情


以前Twitterでも呟きましたが、僕は2014年にCaterham F1 Teamに加入することが内定していました。しかし、2014年シーズンのチーム成績は不振を極め、破綻へと一歩一歩近付いていたようです。Caterham F1 Teamで当時働いていた友人が言うには『明らかに資金繰りが悪化したことを感じ、チームから離脱することを考えた』そうです。

技術資産は積み重ねてこそ価値が高まるものであり、その醸成には長い時間が掛かります。また、F1チームとして真にパフォーマンスを発揮できるようになるためには、時間に加えて巨額な投資も必要になります。しかし、投資が止まれば崩壊することは必然であり、一瞬にして消え去ってしまうものなのです。

Liefieldのファクトリー訪問時に記念撮影(2012年)
Caterham F1 Teamは残念ながら、技術資産が醸成する前に破綻してしまいました。かつてチームの活動拠点であったLiefieldのファクトリーは現在、廃墟となっています。まさに諸行無常の響きあり…といった言葉が思い浮かばれますが、悲しいことに盛者となる前に衰退しかねないことは、F1界における理の一つなのかも知れません。

[つづきはコチラ]

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