変わりゆく世界の中で。
『もうこれまでの世界ではなくなってしまうのかも知れない。』
こんなことを人生で二度も考えることになるとは……かつての僕は想像できただろうか?一度目は2011年の東日本大震災と原発事故。放射能汚染が東北地方を中心に東日本でも問題となり(もちろんそれは今でも決して解決できていないのだけれども)、小さい可能性ながらも自分の生命が脅かされた瞬間だった。
(引用元:F1公式サイト) |
ブログを書いているこの瞬間もたくさんの人が様々な苦難に直面していると思う。幸いなことに、ロックダウンで封鎖された世界でも僕は健康に過ごすことができているが、万が一感染した場合には自分の生命が助かるという保証はどこにもない。
そんな状況の中、残念ながらネットやニュースには真偽の分からない情報、批判、批難に溢れている。その真偽や賛否をここで論じても全く不毛なので、そのことには触れず、これからの未来をどう考えると良さそうか?前進する気持ちを鼓舞するためにも、自分の考えをちょっとだけまとめてみたいと思う。
僕たちが想像する世界。
今、あなたはどんな夢を持っていますか?その夢を達成するためにどんなことを頑張っていますか?そしてその夢はどんな風に達成されると想像していますか?
『明確にではないけど、何となく…』とか『いや、全く想像もつかん(汗)』など、色々あると思うけれども、ここで僕の最近のツイートを紹介したい。
新しいステージに進む人から良く聞くのは『まさかこの道に自分が進むことになるとは…』という言葉。つまり、自分が容易に想像できる未来になることは稀で、想像もしない未来になることの方が多いってこと。だからこそ『自分の限界はココ』と思わず、可能性を追い求める方向に進む方がいいなと思う。
— Kenichi Kono (@KenichiKonoF1) May 14, 2020
ここで僕が言いたいのは、実際に訪れるであろう未来は僕たちが想像する以上の世界になることがほとんどだと言うこと。願わくばその世界は良い方向であって欲しいけれど、コロナウイルスのパンデミックや震災など悪い方向もある。
残念ながら、自分たちがどんなにあがいてもコントロールできない状況は確実にある。けど上にも書いたように、その世界が自分が想像する以上に、なおかつ良い方向に実現する可能性だってもちろんある。
過去を振り返ってみると。
現役での大学受験では全て不合格となり浪人したこと。 でも、諦めずに一年の浪人を経て慶應理工に合格できたこと。
レーシングカートに没頭するあまり留年しそうになったこと。 でも、大学院入試ではトップ10に入る成績で合格できたこと。
新卒で三菱自動車に入社してキャリアスタートしたこと。 でも、二度目のリコール隠し事件を当事者側として経験したこと。
念願叶って三菱WRC活動に仕事で関わる機会に恵まれたこと。 でも、2006年に三菱がWRC活動からの撤退を決定したこと。
日産自動車入社直後は自分の実力の無さを痛感して泣いたこと。 でも、本当に素晴らしい仲間に恵まれて成長できたこと。
フランスのエンジニアリング会社に転職し、ヨーロッパに移住したこと。 でも、上司と衝突して期せずして解雇されたこと。
失意の中、F1の世界にエンジニアとして入れたこと。 でも、今はコロナウイルスによりF1が開幕できずにいること。
でも、でも、どうだろう?
過去を振り返れば、決してネガティブなことだけじゃなくて、ちゃんとポジティブなことが起きていて、幸運なことにポジティブな方でちょっと貯金が出来ているじゃないか。
自分の限界は自分の想像の外に。
今はちょっとネガティブなことが起きている。けど、その先には僕たちが想像する以上のポジティブな何かがきっと待っているんじゃないだろうか?
それはどんなポジティブ?
いや、そんな野暮な想像はやめよう。それは想像を超えてくるに違いない。だから今は考えずに突っ走る時なのだと思う。ポジティブな何かがいつか起きると願いながら、小さなことでも良いから可能性を追い求めてみようじゃないか。自分がどこまで出来るのだろうか?その限界はどこ?そんな考えも想像の外に置いてしまえばいい。
RP20 (引用元:F1公式サイト) |
そして僕の責務はF1エンジニアとしての仕事を続けていくことだ。
だから、約束しよう。ファクトリーのシャットダウンが解除され、仕事が再開されたら僕は再び全力で仕事に取り組もう。
F1を待ちわびるファンのみんなのために、新型コロナウイルスではない、歓喜のパンデミックを引き起こしてみせようじゃないか。
[おわり]