2018年2月4日

クルマのバネ上共振周波数とは?②

[重要なお知らせ(Important notification)]

前回のブログではバネ上共振周波数の重要さについて解説しましたが、一般的にどの程度の値が相場なのでしょうか?そこで次の表におおよその数値をまとめてみました。量産スポーツカーに関して言えば、近年その相場値がレース車両レベルにかなり近くなっているようです。GT3規定車両などの登場の影響があるのかも知れません。

バネ上共振周波数の相場値

最近のトップフォーミュラでは、サードエレメントと呼ばれる剛性要素があるためサスペンションのストローク量に応じてトータルのバネ定数が変化します。これにより共振周波数は一定ではありません。上の表での相場値のレンジがその他の車両タイプに比べて大きくなっているのはこのためです。




バネ上共振周波数の計算の仕方


ここではオーリンズ社製学生フォーミュラ用スプリングダンパーユニットを例に、バネ上共振周波数を計算してみることにします。

(オーリンズUSA社公式サイトより引用)
今回は車両とサスペンションのスペックを次の表にしてみました。ここで注意したいのは、前回のブログで解説したモーション比です。[バネ変形量] / [タイヤ軸中心の上下移動量]と定義されることに注意してください。このモーション比の二乗とバネ定数を掛け合わせることでホイールレートが求まります。

(補足:モーション比が完全に一定値になることはなく、サスペンションのストローク量に応じて変化することが一般的です。このため、モーション比は1G接地状態などの代表値で計算すると良いでしょう)

さて、バネ定数はオーリンズ社のHPより、おおよそ中間の固さである300lb/inを選びました。ここでの注意点は、バネ定数の単位をSI単位系に換算することです。下の表には単位変換後の数値も一緒に掲載してあります。

サンプル車両のスペック一覧

それでは、これらの数値を使いフロント/リヤそれぞれのサスペンションのバネ上共振周波数を計算してみることにします。注意するポイントはバネ定数を2倍する点です。フロント、リヤそれぞれの左右に1個ずつバネが装着されているためですが、この2倍を忘れた数値がスペックシートでも散見されるのでご注意を。




今回の例では、単純な例とするために前後左右全てにおいて同一のバネを使うことを前提としています。今回の計算はフロントで3.91[Hz]、リヤで3.53[Hz]という結果になりましたが、この数値を見てどのように思いましたか?上の表の数値と比べてみると、学生フォーミュラ車両の立ち位置が何となく見えてくるとは思いますが、どう捉えるかは学生の皆さん次第です。

来年以降のデザイン審査において『僕たちの考えるベストな値はこの数値です!』という皆さんの考えをぶつけてくれることを期待しています。

(早稲田大学2014年車両:著者撮影)
最後に、参考までに設計的に非常にまとまっており比較的好印象だったサスペンションの写真を掲載しておきます。コンプライアンス面での剛性不足が少々懸念されますが、サス設計の基本をちゃんと踏まえているので、参戦年数の少ないチームはお手本にすると良いでしょう。



まとめ


前回と今回のブログでバネ上共振周波数の技術的な意味や算出方法について紹介しました。

バネ上共振周波数が適切に設計できるようになると、次はダンパー減衰力がどうあるべきか?さらにはロール剛性はどうすべきか?といった疑問にたどりつくと思います。この先は学術的な知識が必要になってくるとは思いますが、その知的欲求を大学での学びの意欲にも繋げられるとなお良いです。

ちなみにF1のサスペンションには外から見えないところに驚くほどの創意工夫が織り込まれています。残念ながらどんな創意工夫なのかをここに書くことはできませんが、レギュレーションによる制約が少ない学生フォーミュラからF1を超える創意工夫が生まれてくることを期待しています。