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バネ上共振周波数の相場値
前回のブログではバネ上共振周波数の重要さについて解説しましたが、一般的にどの程度の値が相場なのでしょうか?次の表におおよその数値をまとめてみました。量産スポーツカーに関して言えば、近年その相場値がレース車両レベルにかなり近くなっているようです。GT3規定車両などの登場の影響があるのかも知れません。
車両タイプ | バネ上共振周波数 |
---|---|
一般的な乗用車 | 1.2~1.5Hz |
スポーツカー | 1.5~2.5Hz |
レース車両 | 2.5~3.0Hz |
フォーミュラカー | 3.0~8.0Hz |
最近のトップフォーミュラでは、サードエレメントと呼ばれる剛性要素があるためサスペンションのストローク量に応じてトータルのバネ定数が変化します。これにより共振周波数は一定ではありません。上の表での相場値のレンジがその他の車両タイプに比べて大きくなっているのはこのためです。
バネ上共振周波数の計算方法
ここではオーリンズ社製学生フォーミュラ用スプリングダンパーユニットを例に、バネ上共振周波数を計算してみることにします。
引用元:オーリンズUSA社公式サイト |
[モーション比] = [バネ変形量] ÷ [タイヤ軸中心の上下移動量]
このモーション比の二乗とバネ定数を掛け合わせることでホイールレートが求まります。なお、モーション比が完全に一定値になることはなく、サスペンションのストローク位置に応じて変化することが一般的です。このため、モーション比は1G接地状態などの代表値で計算すると良いでしょう。
さて、バネ定数はオーリンズ社のHPより、おおよそ中間の固さである300lb/inを選びました。ここでの注意点は、バネ定数の単位をSI単位系に換算することです。下の表には単位変換後の数値も一緒に掲載してあります。
設計諸元 | 値 | 単位 |
---|---|---|
車両総重量 | 212 | kg |
ドライバー重量 | 68 | kg |
バネ定数 | 300 | lb/in |
バネ定数(SI単位系) | 52538 | N/m |
モーション比 | 0.85 | [m/m] |
前後重量配分比 | 0.45 | [kg/kg] |
これらの数値を使いフロント/リヤそれぞれのサスペンションのバネ上共振周波数を計算してみることにします。注意するポイントはバネ定数を2倍する点です。フロント、リヤそれぞれの左右に1個ずつバネが装着されているためです。計算結果は次のようになります。
バネ上共振周波数の計算結果 |
学生フォーミュラの車両として果たしてベストな数値はどの程度なのか?学生フォーミュラに参戦しているチームはぜひ検討してみてください。
まとめ
前回と今回のブログでバネ上共振周波数の技術的な意味や算出方法について紹介しました。バネ上共振周波数は、自動車開発においてはバネ上である車体の上下方向の動きを支配する重要なパラメータであり、設計変更に伴い、重量、バネ定数、モーション比を適切に再設計する必要があることが理解できたと思います。
バネ上共振周波数が適切に設計できるようになり、かつダンパーの減衰力がどうあるべきか?といった上下方向運動の技術課題を解決できるようになると、その先にはメカニカルバランス(前後ロール剛性配分)などロール運動の最適化の課題が待っています。
どのような評価手法を用いればレーシングカーとして最適なバネ上挙動を実現できるか?この課題については学術的にも様々なアプローチが可能です。ぜひ、学生フォーミュラのデザイン審査では『自分たちはこう考えて最適化を試みた!』という創意工夫を審査員にアピールしてくれることを期待しています。
[おわり]