2018年2月11日

F1ドライバーとドライビング理論②

[前回のブログ]
[重要なお知らせ(Important notification)]


ドライバーの運転行動とは?


運転中のドライバーはいくつかの運転行動を繰り返し実行しています。日頃それらの運転行動を意識的に実行することはありませんが、無意識的に実行されていることを知っておけば安全運転のヒントになると思います。このブログに書かれていることを参考にしつつ、日々の安全運転とレース観戦に役立ててもらえれば幸いです。

(イギリスの2車線のモーターウェイ)
それでは上で述べた運転行動について紹介することにしましょう。ドライビングは次の三つの運転行動の繰り返しによって成り立っています。

①認知
【視覚情報】
信号の状態 / 他車との距離 / 歩行者の有無 / 車両の速度 / 路面の状況など
【官能情報】
加速G / 横G / 上下加速度 / ヨー角速度/ハンドルやブレーキの反力

②判断
認知で得られた情報を総合的に判断し、次の取るべき運転操作を決定します。運転行動において最も重要になるのが、この判断になります。そして第一弾で紹介した欧米のレーシングドライバーの好戦的な運転行動特性は、この判断が日本人とは違うことに起因しています。

③操作
判断結果に従い、ドライバーはアクセル操作/ブレーキ操作/ハンドル操作を実行します。単独で実行することもあれば、同時に実行される複合動作となることもあります。レーシングドライバーはこの操作に身体的能力の高さが要求されます。

それでは①~③を図式化してみることにしましょう。この図式によって、アタマの中でイメージしやすくなると思います。




このようなサイクルをドライバーは常時繰り返し実行しているのです。一般的に、このサイクルのうち少なくとも一つに問題が発生した時に交通事故は発生します。認知不足、判断ミス、操作ミス、そして車両故障です。運転に慣れてくると無意識のうちにミスをしがちです。安全運転のためにも、それぞれの運転行動がちゃんとできているか?車両に整備不良がないか?こういった基本を見直すことをおススメします。

それではF1ドライバーは一般のドライバーと違って何がすごいのか?次にその違いを上で紹介した図を用いて解説していきます。

F1ドライバーの驚異的な運転行動サイクル


一般ドライバーとF1ドライバーの決定的な違いは運転行動サイクルの速さと正確さです。公道での運転において一般的なドライバーのサイクル回数が10回/秒であるとすると、F1ドライバーは1000回/秒でのサイクルが可能である、といったように例えられます。ここで挙げた数値はあくまで例ですが、F1ドライバーは強烈な速さで運転行動をこなしているのです。

(引用元:F1公式YouTubeチャンネル)
三つの運転行動の中でF1ドライバーにとっての基礎は『操作』になります。1時間半に渡ってハイペースでレースを走り切るには驚異的な身体能力の高さが求められますが、現代のF1ドライバーの身体能力はトップアスリートそのものなのです。

例えば次のドライバーにはどのようなイメージがありますか?クビ周りの太さはありますが、全体的な印象としては線の細い体格をイメージさせます…

(引用元:F1公式サイト)

しかし…レーシングスーツを着ていないと、そのイメージは一変します。

(引用元:Esteban Ocon公式Twitter)
脳内での運転行動サイクルの速さに加え、最大で5Gを超える過酷なG環境の中で確実で持続的な動作も求められる。それがF1ドライバーというトップアスリートになるための絶対条件なのです。


F1ドライバーの『判断』基準とは?


レースにおいて好結果を得るためには、リスクと確実性という相反するパラメータを高度にバランスさせた判断が必要です。そしてその判断基準に大きな影響を与えていると考えられているもの、それが前回のブログでも述べたDNAレベルの闘争本能です。

(引用元:F1公式YouTubeチャンネル)
現在の全てのF1ドライバーは『認知』と『操作』についてはトレーニングによってトップアスリートのレベルにあります。しかし、『判断』について言えば、DNAレベルの本能に加えて年齢や性格に大きく影響されるため、個性が最も出る領域なのです。

結果の伴うドライバーとそうでないドライバー、そこにどんな判断の差があるのか?このような視点と一緒にレースを見ることで、何か新たな世界が見えてくるかも知れません。ぜひ、想像(妄想?)しながらレース観戦を楽しんでみてください。

[おわり]