2018年7月15日

僕がF1エンジニアになるまで【完結編②】

[前回のブログ]
[重要なお知らせ(Important notification)]

最終回にあたって。


『僕がF1エンジニアになるまで』いよいよ完結となります。

今回のブログ更新では、フォースインディアF1チームから契約オファーを受けてからの僕の気持ちと現在の意気込みを書きたいと思います。そして、このブログを読んで頂いた読者の皆さんへのメッセージと、これから夢を実現したい人たちへのアドバイスも書きたいと思います。


また、なぜ『僕がF1エンジニアになるまで』を書くことにしたのか?そのモチベーションの源泉となった気持ちも綴ろうと思います。今回のブログはちょっと長くなりますが最後までお付き合いください。そして、『僕がF1エンジニアになるまで』を最後までお読み頂き本当にありがとうございました。

終わりから始まりへ。


フォースインディアF1チームから契約オファーをもらえたことでようやく開いたF1への扉。少しは落ち着ける日が過ごせるようになるかな…と思ったのも束の間でした。安堵と入れ替わるようにして僕が抱いたのは『恐怖』という感情でした。

それまでにF1での業務経験はもちろん皆無でしたし、モータースポーツ車両の開発経験もごく僅か。そんな僕がF1の世界でいきなり結果を出すことができるのか?このような疑問が僕に『恐怖』という感情を持たせたのだと思います。正直、自信なんて全くありませんでしたが、そもそも自信とは結果を出してこそ得られるものです。F1での仕事の自信はF1の世界で結果を出す以外に得られません。

また、F1に辿り着くことは僕のキャリアにとっては単なる通過点であり、始まりでしかありません。このことを再認識した僕は、今更ながら自分が飛び込もうとしている未知の世界に慄くのですが、それと同時に『ワクワク』という感情も持つようになります。

(引用元:フォースインディアF1公式サイト)
具体的には『F1の世界ではどれほどエキサイティングな仕事が待ち受けているのだろう?早くチームの戦力となって速さに貢献したい!』という感情です。そして、自分の人生において最も重要な新スタートを迎えることにあたり、こう決意を新たにします。

『いずれF1で勝てるクルマを開発してみせる!』

今、僕はこの決意とともにシルバーストーンにあるフォースインディアのファクトリーで、Vehicle Science Engineerとしての仕事に日々没頭しています。フォースインディアのような独立系チームがいつかトップチームに打ち勝つ日を夢見ながら。

F1を目指した日々の中で。


長きに渡ってF1を目指して頑張ってきました。決してラクではありませんでした。僕の実力不足が原因で大きな遠回りもしていたと思いますし、とてもツラい日もありました。それでも僕は常日頃からF1への夢をたくさんの人に語っていました。

大学時代の同期、三菱自動車と日産自動車の仲間、全日本学生フォーミュラの設計審査員の仲間、レーシングカートの仲間、ラジコンの仲間、学生フォーミュラで面倒を見てきた学生の皆さん、F1ですでに働いていた先輩の皆さん、そして何よりも自分の家族。自分でも恐ろしくなるくらいに大風呂敷を広げていたと思います。もうあとには引けないほどに。

(引用元:フォースインディアF1公式サイト)
しかし、僕の場合、とてつもなく大きく広げた大風呂敷が功を奏したようです。小さな可能性が少しずつその大風呂敷の中に積もっていき、ある時それが大きな可能性へと昇華したからです。さらに、その大風呂敷に巻き込まれつつも『応援しているよ!』と純粋に言ってくれるポジティブな人間関係も大きな可能性への昇華を手伝ってくれていたように思います。

だから僕は、もし叶えたい夢があるならば、それを誰かに話してみるのがいいと思います。『叶わなかったら恥ずかしいし…』と躊躇する気持ちもなくはないですが、自分の夢を誰かに話すことで自分はもっと頑張ろうとしますし、話相手となった人は『自分も頑張ろう!』と思ってくれるかも知れません。

夢の共有は双方にポジティブな影響を与え合うと僕は思います。多くの人と夢を共有すればする程、ポジティブな人間関係は大きな広がりを持つことになり、いつの日か自分の望む『何か』が起きると僕は信じています。


F1という夢の実現とは。


今、読者の皆さんの心の中にはどんな夢がありますか?人それぞれ様々な夢や想いがあると思いますが、その夢の実現に向けて一歩を踏み出すことは時として大きな勇気とリスクを伴います。だから、僕は夢の追求を安易に人にオススメすることができません。

(引用元:フォースインディアF1公式サイト)
それでも、僕がF1エンジニアになるという目標を達成できたのは、

『少しずつでもいいから、一歩一歩前に進んでいこう』

と決めていたからです。さらに何か決断を下さなければならない時は、

『ちょっとだけ難しい方を選んでいこう』

とも決めていたのです。これが僕の選んだスタイルでした。

僕は夢の実現とは『自分がありたいと思う姿と、今の自分の姿との差分を埋めていく修行の旅』だと考えています。このような旅に、僕のスタイルが全ての人に合うとは思いませんが、これから夢の実現に向けて頑張ろうとする人にとって、僕の経験してきたことが少しでも参考になれば幸いです。

僕が伝えたかったこと、伝えたかった人


2月末より連載を始めた『僕がF1エンジニアになるまで』ですが、この記事を書くにあたり、いくつかのモチベーションがありました。その中に源泉となったモチベーションがあります。正直に書くと、あるたった一人のためにこのブログ記事を書くことを決意したと言っても過言ではありません。

そのたった一人とは、日本で暮らす僕の愛娘です。

海の向こうに広がる世界を見据えて!
今はまだ5歳なので、このブログの存在も知りませんし読むこともできませんが、娘が成長して大きくなれば、彼女の中にきっと夢が芽生えてくると思います。それがどんな夢になるのか今の僕には知る由もありませんが、彼女がその夢を実現しようとした時、恐らく壁にぶつかり、悩み、苦しむと思います。その時に僕がどんなふうに自分の夢や目標を実現してきたのか?それを知ってもらうことが彼女にとって良き道標になればいいな…と、そんな思いでこのブログ記事を綴っていました。

F1を目指す気持ちが強く、自分の夢の実現を優先するあまり、父親としては100点満点であったとは決して言えません。その償い…という訳ではありませんが、F1の世界での夢や目標を実現することで、彼女にとって大いに誇れる父親になれるよう、これからも日々頑張っていきたいと思います。

そして将来、彼女が夢の実現に向けて歩みだした時、僕は彼女の夢を全力で応援してあげたいと思います。

終わりに。


4ヶ月以上に渡る連載ブログ『僕がF1エンジニアになるまで』を最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。このブログを通じて、読者の皆さんの心にポジティブな"何か"が芽生えたのであればとても嬉しい限りです。

それでは、連載ブログテーマ『僕がF1エンジニアになるまで』、最後はこの言葉で締めさせて頂きたいと思います。

『どうか、皆さんの夢も叶いますように。』


[おわり]

6 件のコメント:

  1. お疲れ様です。
    いつもながら、大変ためになるブログありがとうございます。
    3月に、コメントを頂き大変嬉しく思い、最近は私も妻や息子等に定年後の夢を語りだし、もともと、モータースポーツ好きな息子は「なれるさ❗️」と言ってくれますし、何より息子の神野さんと同じようにF1の世界へ行きたい息子の最近の行動力が、ブログにより活発化しております。
    自分で、英語の手紙を書き、学校の先生に添削を受けながら、住所を調べ手紙を出しております。返事を、待っておりますがどうでしょう。もちろん、フォースインディアにも。
    しかし、E-mailで某チームから返事が来て喜んでいます。ま~お世辞と思いますが。 でも、前へ前へ進んで行く、仕草に父として誇らしく驚いてもいます。
    神野さんのブログがなかったら、私たち親子の夢は、前へ進んでなかったかもしれません。
    ありがとうございます。
    今度のイベントには、行けませんがいつかお話が、聞けたら幸いです。
    まだ、シーズン中のお忙しい中とは思いますが、お体には気をつけて頑張ってください。
    フォースインディア応援しています。
    長々とすみませんでした。

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    1. コメントありがとうございました。川内さんのご家族の皆さんがとても前向きな気持ちになれたことを知り、僕もとても嬉しくなりました。そしてこの記事を書いて良かったとも思いました。皆さんの夢が叶うと良いですね!イギリスより応援しております。

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  2. 鈴木渡です。一気にこのブログを読み切りました。出会いに感謝です。
    浜松出身で「レースしかやりたくない!」って28歳で新入社員として自動車会社に入りましたが、想いだけでお酒に逃避して20年を過ごしてしまいました。
    もう一度、情熱と自分自身の今を生きていきます。
    2000ccクラスのワインディングを気持ち良く走れるクルマ!づくりを目指します。
    『F1で勝てるクルマ開発』祈念しております。

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    1. コメントありがとうございます!このブログを通じて皆さんの心に何か響くものがあり、そして何か前向きな方向へと変わることがあったのであれば本当に嬉しい限りです。どんな立場であれ、モノ造りに携わる人間としてお互いに頑張りましょう!

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  3. ブログ全て読ませていただきました。
    レーシングドライバーを目指していましたが金銭的な問題で諦め、理学療法士の道を歩むことを決め2月に国家試験を控え合格すれば4月から理学療法士として働くものです。
    現在、理学療法士を目指していますが、心のどこかでモータースポーツや車産業に関わりたいという気持ちがありました。しかし理学療法士として関わるのは狭き門であり、諦めかけていました。その中で神野さんのブログを読ませていただき、これから出会う方との関係を大切にし、少しずつでも一歩一歩進んでいけば、狭き門でも叶えることが出来るのではないかと思うことができました。
    ありがとうございます。
    今後悩んだ時や困った時などにこのブログをまた読んで行きたいと思います。
    フォース・インディア応援しています。
    長々と失礼しました。

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    1. コメントありがとうございます!確かに理学療法士としてモータースポーツに関わることは簡単ではありませんが、今後、理学療法士として経験をしっかりと積み、プラスアルファで何か強みを身に着ければ、将来的にレーシングドライバーのスポーツトレーナーとしての可能性も十分に開けてくるかと思います。ここからがスタートだとは思いますが頑張ってください!

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