2018年5月12日

僕がF1エンジニアになるまで【第二次転職活動編②】

[前回のブログ]
[重要なお知らせ(Important notification)]

イギリスの就労ビザ


前回のブログで書いたように、海外の会社から契約オファーをもらうにはCV(履歴書)を戦略的かつ読み手に理解しやすくすることが重要なことを僕は学びました。もし、僕が日本人ではなくイギリス人やヨーロッパ国籍であればそれだけの学びで十分だったでしょう。しかし、日本人だからこそ直面する大きな課題があったのです。

イギリスの就労ビザ
その大きな課題とは『就労ビザの取得』です。海外で働くことを一度でも真剣に考えた人であれば、誰しもが直面する課題だと思います。自分の夢や想い、熱い情熱とは一切関係なく『この国で働きたいなら就労ビザを取ってください。』とイギリスの法律に基づき厳格に求められるのです。

EU圏内の雇用情勢と就労ビザ


日本人が外国でフルタイム勤務で就労するためには、イギリスを含めヨーロッパの多くの国で就労ビザの取得が求められます。しかもその取得条件は非常に厳格で、簡単に取得できるものではありません。そもそもEU諸国で自国経済に余裕があるのはドイツくらいで、失業率の高さはどの国でも大きな課題になっています。

そんな中、日本人が『この国で働かせてください!』と叫んでも、受け入れ側の国からすれば『いや、まずは自国の雇用を確保したいので…』と考えるのは自然な流れですし、その国で失業している人からすればあまり歓迎できることではありません。これがヨーロッパ各国の法律で就労ビザ取得条件が厳格になっている理由です。

イギリス政府移民局の情報サイト
なお、就労ビザの取得のしやすさは、その国の経済力によるところが大きいという印象があります。例えばドイツですが、世界的に有名な企業(Daimler、BMW、Volks Wagen、Siemens、PUMA、ADIDASなど)が数多く存在しておりヨーロッパ経済のみならず、世界経済をも牽引する勢いです。このためか、ドイツでの日本人の就労に関しては他国に比べるとかなり敷居が低いという印象です。

一方でイギリスですが、世界一の金融立国という側面はあるものの、失業率の高止まりやEU離脱問題などもあり、今後は日本人などのEEA圏外からの移民者への就労ビザ発給の敷居がさらに高くなる可能性があります。先にも書きましたが、海外での就労ビザ取得はその国の法律や政治情勢に大きく左右されるため、個人の夢や情熱だけではどうにもならない課題なのです。



就労ビザの取得プロセス


とはいえ現に僕はイギリスとフランスの両国で就労ビザを取得できているわけですので、参考までにイギリスの就労ビザがどういったプロセスを経て発行されたのか、その大まかな流れを解説します。

① 企業から仕事のオファーをもらう
『そもそもどうやってオファーをもらうの?』という疑問には今回のブログでは触れませんが、幸いなことにオファーをもらえたことを前提としましょう。オファーに至るまでの経緯や海外での就職活動のノウハウについてはこちらの連載記事をお読みください。

② 企業にダミーの求人広告を出してもらう
なぜダミー広告なのか?日本人を採用するにはその妥当性を企業が証明する必要があるのですが、一定期間だけ求人広告を出し『国内で人材を探したけど良い人材が見つかりませんでした。』という証拠を企業が作り、移民局に提示する必要があるためです。

③ 企業に就労ビザの提供者となるための申請をしてもらう
ダミー求人が終わるとようやく移民局への申請となります。企業側が申請をするのですが、一般的にその企業と契約した弁護士さんが代理で申請します。その弁護士さんから色々な書類を求められるので、指示通りに書類を準備して弁護士さんに渡します。無事に申請が承認されると"Certificate Of Sponsorship(COS)"という書類が企業に発行されます。

④ 日本国内から就労ビザの申請をする
日本国内での申請用の書類を作成し、そこにCOSの番号を記載します。さらに英語力の証明のための成績書(ビザ専用のIELTS)やパスポートなどいくつかの書類を準備して、ビザ申請センターにて予約をした上で申請に行きます。

⑤ 就労ビザ取得後、渡英してBRPを受け取る
無事に申請が承認されると就労ビザのステッカーが貼られたパスポートが1週間ほどで返却されます。また、パスポートと一緒に1枚の書面(←超重要)が渡されるので、その書類を持って渡英し、指定された郵便局でBRP(Biometric Resident Permission)カードを受け取ります。

と、※上記が就労ビザの取得プロセスになります。お分かりの通り、イギリスの就労ビザは採用する側の企業が採用予定者の身元を保証することで初めて取得することができるのであり、個人でどうこうできる課題ではではないのです。

さらに企業側も採用予定者のどちらも…

『かなり面倒なんですけど…』

と思わずにはいられないほどの手続きの複雑さです。加えて会社側は各種申請費用や健康保険のデポジット納付の負担義務があるため、二の足を踏む企業も少なくありません。

ところで、イギリス企業は新卒へのビザ発給を避ける傾向があります。即戦力として期待できる中途採用者向けにビザ発給枠を確保しておきたいとう思惑があるからだそうで、新卒でイギリス企業への就職を目指す場合は希望先企業と事前にビザ発給について相談しておいた方が良さそうです。

COSの有資格企業のリスト
ちなみに先ほど書いたCOS(就労ビザ提供の承認書)は、その取得資格を会社側が持っていなくてはなりません。つまり、その資格のない企業はそもそも日本人を雇用することができないということです。もしくはその資格を会社が取得してから上記①~⑤のプロセスを踏まなくてはなりません。このように、手間も時間もお金も掛かるのが就労ビザの取得というものなのです。

※僕の就労ビザの取得は2016年10月であり、現在の取得方法とは異なる可能性がありますのでご注意ください。また、現在のイギリスの就労ビザ取得に関する質問にはお答えしかねることをご了承ください。


日本人であるということ


上にも書いたように就労ビザの取得申請は企業からすれば、できれば避けたいものです。そして残念なことに、日本人であるということでCVすら見てもらえずに断られるというケースも決してゼロではありません。特に自分の場合、日本で生まれ育ち、日本の学校を卒業し、日本企業で働いてきました。過去にホンダ、トヨタ、ブリヂストンでF1の仕事に関わっていたのであれば、その時の実績を評価してもらえることができますが、自分にその経験は一切ありませんでした。

TOYOTA TF109(引用元:TGR公式サイト)
そんな人材をF1チームはどう見るか?答えは簡単。『そんな日本人を雇用するのはリスクが大き過ぎるし、とりあえず対象外にしておこう』というものです。つまり、僕はそもそも採用検討対象のテーブルにすら上がれていなかったのです。

ではどうすれば良いのか?この難課題を乗り越えるために下した決断、それがヨーロッパで仕事のキャリアを積み上げることだったのです。

[つづきはコチラ]

0 件のコメント:

コメントを投稿